ルコック探偵

エミール・ガボリオ『ルコック探偵』

『ルコック探偵』（Monsieur Lecoq）は、1869年に発表されたエミール・ガボリオによる長編推理小説です。ルコック刑事とタバレが登場する最後の長編作品として知られています。

あらすじ

物語は、パリの居酒屋で深夜に発生した事件から始まります。悲鳴と銃声が響き、駆けつけた警察官が目にしたのは、3人の死者と銃を持つ1人の男でした。男は正当防衛を主張しますが、若い刑事ルコックは、ベテラン刑事のアブサンと共に捜査を担当することになります。しかし、容疑者に翻弄され、移送中に逃亡を許してしまうという失態を演じてしまいます。途方に暮れたルコックは、師であるタバレ老人に助けを求めます。

物語は二部構成となっており、第一部では事件の捜査と解決が描かれ、第二部では事件の背後にある過去の出来事が明らかになります。

主な登場人物

第一部

シュパン未亡人: 事件現場となった酒場の女将。
ギュスターヴ: 3人の被害者のうち、名前が判明している人物。
ラシュヌール: 3人の被害者を酒場に呼び出したとみられる人物。
メイ: 現場で発砲された銃を持っていた男。道化師を自称し、正当防衛を主張する。
モーリス・デスコルバル: 判事。冒頭で足を骨折し、捜査から離れる。
セグミュレ: 判事。デスコルバルの代わりを担当。
セルムーズ公爵: 逃亡したメイが姿を消した邸宅の主。
ジェヴロール: パリ警視庁の警部。ルコックとアブサンの上司。
ルコック: 元前科者の刑事。本作以前の作品でも探偵役を務める。
アブサン: ベテラン刑事。ルコックの相棒。
タバレ: 第一長編『ルルージュ事件』の探偵役。本作では、自宅でルコックにアドバイスを与える。

第二部

シュパン: 酒場の亭主。
セルムーズ公爵: セルムーズの元領主。過去に土地を没収されていたが、復権。
ラシュヌール: セルムーズの領主代行。公爵の土地を管理。
ジャン・ラシュヌール: ラシュヌールの息子。
マリー・アンヌ: ラシュヌールの娘。
マルチアル・セルムーズ: セルムーズ公爵の息子。
モーリス・デスコルバル: 若き日の判事。
ブランシュ・クルトミュー: クルトミュー侯爵の娘。マリー・アンヌの友人。
シャンルイノー: セルムーズの郷士。マリー・アンヌに求婚する。
ミドン司祭: セルムーズの聖職者。村の実力者。

特徴

本作は、第一部で事件の捜査と解決、第二部で事件の背景にある過去の回想が描かれるという構成が特徴的です。過去の因縁が複雑に絡み合い、事件の真相をより深く掘り下げています。

日本語訳

「ルコック探偵」（1929年、改造社、世界大衆文学全集、田中早苗訳）
* 「ルコック探偵」（1979年、旺文社文庫、松村喜雄訳）

備考

『ルコック探偵』は、推理小説黎明期を代表する作品として、その後の多くの作品に影響を与えました。詳細な状況描写や心理描写、そして意外な展開が読者を魅了し、現在でも読み継がれています。

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