ルシヨン

ルシヨンの概要

ルシヨン（仏：Roussillon、加：Rosselló、西：Rosellón）は、フランスの南部にある歴史的地域であり、かつてはフランス革命以前の州として存在していました。この地域は、古くはカタルーニャ君主国に属しており、現在ではフランスのピレネー＝オリアンタル県に組み込まれています。カタルーニャ語を話す人々によっては、北カタルーニャ（Catalunya del Nord）と呼ばれることもあります。

歴史的背景

ルシヨンという名前は、現在のペルピニャン近郊にあった小さな軍事要塞ルシノに由来しています。この場所は、歴史的にガリア人の族長たちが集まり、重要な協議を行った地でもありました。紀元前121年から紀元462年まで、この地域はローマの属州ガリア・ナルボネンシスの一部として支配されていました。462年には、西ゴート王テオドリック2世がセプティマニアの残余を割譲し、彼の後を継いだアマラリックが531年にクローヴィスに敗北しました。

719年、イスラーム軍がピレネー山脈を越えてこの地域に侵入し、756年にピピン3世に敗れるまで支配を続けました。778年、カール大帝がヒスパニアに侵攻し、ルシヨン地域にはイスラームとの間にマルカ・ヒスパニアという緩衝地帯が設けられました。地域はイスラーム軍との交戦によって疲弊し、多くの住民は山地に移り住みました。

893年、スニェー2世が初代ルシヨン伯として登場しましたが、彼の権力は現在の県エリアの東部のみでした。西部のサルダーニャ地区は、900年にサルダーニャ伯ミロンによって支配されました。ルシヨン伯は歴史を通じて周辺の貴族と争い、特にアンプリアスの伯爵との同盟を結んでいました。12世紀初頭には、バルセロナ伯の影響力が増し、ルシヨン伯はその忠誠を誓わざるを得ませんでした。

バルセロナ伯領とアラゴン王国

1111年にバルセロナ伯ラモン・バランゲー3世がバザルーの封土を継承し、1117年にサルダーニャを併合しました。最後のルシヨン伯ジラルド2世の死後、その地位はアラゴン王アルフォンソ2世に引き継がれ、1172年にはルシヨンがアラゴン王国に併合されました。この時期、地域は経済的に成長し、特にペルピニャンの港町クリウラは地中海貿易において重要な役割を果たしました。

ただし、フランス王国とアラゴン王国が力を増す中で、ルシヨンは両国の国境地帯となり、軍事衝突が頻発しました。1258年にはコルベイユ条約が結ばれ、これによりフランスのルイ9世はルシヨンの宗主権を放棄し、アラゴン王国の影響下に留まることとなりました。

近世以降の動向

アラゴン王国のハイメ1世は、イスラーム教徒からバレアレス諸島を奪還し、これらはルシヨンに統合されました。その後の争いの中で、フランス王フィリップ3世はアラゴンに攻撃を仕掛けるものの、疫病が流行したため、フランス軍は撤退することとなります。1488年、フランス軍はルシヨンを占領し、1493年までその支配が続きました。

1496年から1498年にはスペイン＝フランス戦争が勃発し、ルシヨンの住民は双方の侵略者から苦しめられました。しかし、1641年にはカタルーニャ人がスペイン王国に反乱を起こし、その結果1659年のピレネー条約によってルシヨンとサルダーニャの一部がフランスに帰属しました。

このように、ルシヨンは長い歴史の中で様々な国の影響を受け、現在もその文化的アイデンティティを維持しながら、フランスの一部として存在しています。フランス革命に伴い、旧ルシヨン州は廃止され、ピレネー＝オリアンタル県が設けられましたが、地域の名前は21世紀においても様々な形で残されているのです。

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