ルッジェーロの書

ルッジェーロの書：イドリースィーの地理的傑作

『ルッジェーロの書』、または『ルージャールの書』として知られるこの書物は、1154年にノルマン朝シチリア王ルッジェーロ2世の命令で制作された世界地図および地理書です。この重要な資料は、著者である中世イスラームの地理学者イドリースィーによって作成されました。正式には『諸地方を旅行したいと願う人の気晴らしの書』と名付けられており、アラビア語では『Kitāb Nuzhat al-mushtāq fi'khtirāq al-āfāq』と呼ばれていますが、一般にはイドリースィーの地理書として知られています。

概要

イドリースィーは1138年頃、ノルマン王の宮廷で約15年間にわたり、地図の写本作成とその注釈の仕事を行いました。『ルッジェーロの書』は、アラビア語で書かれ、7つの気候帯に基づいて編成されています。これは、古代ローマの学者プトレマイオスの手法を受け継いだもので、各気候帯はさらに10に分けられており、全体で70区画から構成されています。この地理的資料は大変膨大で、写本によると合計140葉に及びます。

地図の範囲はユーラシア大陸の広い範囲にわたり、西はヨーロッパの端から東は中国の極東まで及びます。北アフリカも含まれ、地図は北が下に配置されています。また、作成から3世紀が経った後でも、これが世界で最も正確な地図の一つであったとされています。イドリースィーは、地図の各区画に付される説明文で、その地域の物理的、文化的、政治的、社会経済的な状況を詳述しました。

地図の作成方法

イドリースィーは、個人や団体の旅行者からの情報を集め、彼らが持つ知識を基に地図を作成しました。特に、信頼性の高い情報や完全に合意される内容のみを使用し、矛盾する情報は除外する努力をしました。ルッジェーロ2世は、これらの情報に基づいて作成された地図を、300ポンドもの重さの銀製の円盤に刻印したと言われています。

イドリースィーの記述によれば、7つの気候帯はそれぞれ国や地方、海岸、島々、湾、たり、河口、そして水路を示しています。これにより、当時の地理上の知識と世界観が豊かに表現されています。

現存する写本

『ルージャールの書』の現存する写本は10点あり、その中の5点が完全なテキストを保持しています。8点は地図も含んでいます。フランス国立図書館では、最も古い写本である1325年の写本（MS Arabe 2221）を含んでおり、他には1553年にカイロで製作された写本がオックスフォード大学のボドリアン図書館に収蔵されています（Mss. Pococke 375）。この写本は1692年にオックスフォードに持ち込まれました。すべての中で最も完全な写本はイスタンブールに保管されています。

まとめ

このように、『ルッジェーロの書』はイスラームの地理学の中でも極めて重要な作品であり、その価値は今日においても色褪せることはありません。地図とテキストは、当時の人々の地理的理解や世界観を反映し、歴史的な文献としての意義を持ち続けています。

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