ボドリアン図書館

ボドリアン図書館：オックスフォードの知の殿堂

ボドリアン図書館は、イギリス・オックスフォード大学に存在する世界的に有名な図書館です。その歴史は古く、14世紀にまで遡りますが、現在の姿は1602年に外交官で学者のトーマス・ボドリー卿の尽力により再建されたことに始まります。ボドリー卿は、図書館の拡張と充実のために多大な貢献を行い、図書館の名も彼に由来しています。

オックスフォード大学の教員や学生からは親しみを込めて「ボドリー」または「ボド」と呼ばれ、イギリス国内では大英図書館に次ぐ規模を誇ります。2003年法定納本図書館法案に基づき、イギリス国内で発行される出版物の納本を受ける6つの法定納本図書館の一つに指定されています。さらに、アイルランドの法律に基づき、アイルランドの出版物の複製権も有しています。

壮麗な建築と広大なコレクション

ボドリアン図書館は、オックスフォード中心部にある複数の建物と、郊外にある複数の収蔵庫から構成されています。ハンフリー公図書館（15世紀建設）を始め、1930年代に建設された新館まで、建築様式や時代を反映した様々な建物が調和して存在しています。地下書庫も複数存在し、膨大な蔵書を収容しています。

主要な図書館施設としては、アレクサンダー図書館、ボドリアン中国研究図書館、ボドリアン教育図書館など、専門分野ごとに特化した図書館が数多く存在します。また、ラドクリフ科学図書館など、独立した図書館との連携も強固です。これらの図書館群を統合した電子カタログシステム「SOLO」は、研究者の利用に大きく貢献しています。

図書館利用と伝統の誓約

図書館の利用には、古くから伝わる誓約書の署名（または宣誓）が必要です。これは、図書館の所蔵物を大切に扱うことを誓うもので、伝統を重んじる図書館の姿勢を示しています。誓約書の原文は英語で、多くの言語に翻訳されたものが用意されているため、外国人利用者にも配慮されています。

歴史を刻む蔵書

ボドリアン図書館の所蔵物は、その歴史の長さを反映して非常に多岐に渡ります。14世紀に創設された初期の図書館から、ボドリー卿による再建、そして近現代に至るまで、絶え間ない寄贈や収集活動によって、膨大なコレクションが形成されてきました。

特に貴重な所蔵物として、グーテンベルク聖書、シェイクスピアのファースト・フォリオ、マグナカルタ（4つの写[[本]]）、そして様々な古写[[本]]などが挙げられます。これらの資料は、歴史研究や文学研究において重要な役割を果たしています。さらに、トーマス・ボドリー卿の収集した資料や、ジョン・セルデンの遺贈など、歴史上重要な人物とのつながりも図書館の歴史を彩っています。

建築物と拡張の歴史

15世紀に建設されたハンフリー公図書館は、ボドリアン図書館の前身ともいえる存在です。ボドリー卿による再建後は、スクールズ・クアドラングルや五様式の塔といった、特徴的な建物が次々と建設されました。これらの建物は、オックスフォード大学の景観を形作る重要な建築物でもあります。18世紀には、ラドクリフ・カメラの増築、1930年代には新館の建設など、収蔵量の増加に伴い、図書館は幾度となく拡張されてきました。

20世紀以降も、地下書庫の建設、新館の建設など、常に図書館の拡張が行われ、現在に至っています。近年では、オックスフォード郊外に新たな大規模収蔵庫が建設され、さらなる蔵書の保存と管理体制の強化が図られています。

著作権とデジタル化への取り組み

ボドリアン図書館は、著作権に関して厳格な姿勢を保ちながら、デジタル化にも積極的に取り組んでいます。近年は、個人利用を目的とした複製が、一定の条件下で許可されるようになっています。また、オックスフォード電子図書館との連携を強化し、貴重な資料のデジタルデータ化を進めています。

ボドリーの司書

ボドリアン図書館の長は「ボドリーの司書」と呼ばれます。初代司書はトーマス・ジェームズで、1602年に任命されました。ボドリー卿は、司書には勤勉で信頼できる人物であることを求めていました。歴代の司書たちは、図書館の発展に貢献した一方で、その中には職務怠慢を指摘された者もいました。2007年には、史上初の女性司書であるサラ・トーマスが任命されました。彼女はアメリカ人で、ボドリアン図書館初の外国人司書でもあります。

文化とフィクションにおけるボドリアン図書館

ボドリアン図書館は、その歴史と建築美から、数々の小説や映画の舞台として登場してきました。ドロシー・L・セイヤーズの小説「学寮祭の夜」や、J・R・R・トールキンの作品「指輪物語」にも、ボドリアン図書館が直接的または間接的に影響を与えています。また、「ハリー・ポッター」シリーズをはじめ、多くの映画作品にも撮影場所として利用され、その荘厳な姿は世界中に知られています。

ボドリアン図書館は、単なる図書館という枠を超え、オックスフォード大学の象徴であり、世界の知的遺産を継承する重要な機関として、今後もその役割を果たしていくことでしょう。

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