ルテチウムの同位体

ルテチウムの同位体について

ルテチウム（Lu）は、周期表においてランタニウム系列に属する元素で、その同位体は自然界に存在するものと、人工的に生成されるものがあり、特に天然に存在するものについて注目されます。ルテチウムの同位体には、安定同位体の175Luと放射性同位体の176Luがあります。175Luは、天然に存在する同位体の中で最も豊富で、存在比は約97.41%です。一方、176Luは約2.59%の比率で自然界に存在し、その半減期は3.719億年と非常に長い特性を持っています。

天然に存在するルテチウムの同位体は33種類に及び、176Lu以外にも174Lu（半減期3.31年）、173Lu（半減期1.37年）といった比較的長寿命のものがあります。その他の同位体は短命で、ほとんどが半減期9日以内で、大半は30分以下の時間で崩壊してしまいます。また、ルテチウムには18種類の核異性体もあり、その中でも安定性を持つものとして177mLu（半減期160.4日）、174mLu（半減期142日）、178mLu（半減期23.1分）などがあります。

ルテチウムの同位体の原子量は149.973から183.961の範囲に分布しており、最も安定した175Luよりも軽い同位体は、電子捕獲によってイッテルビウム（Yb）に変わり、更に169Luよりも重い同位体はベータ崩壊によりハフニウム（Hf）に変化します。これは、同位体の異なる特性を理解するために重要な要素となります。

さらに、ルテチウム177はその医療利用が注目されています。2020年8月31日には神経内分泌腫瘍を対象にした医療用核薬剤である177Lu-DOTATATEが、富士フイルム富山化学から製造販売の承認を受けました。この治療薬は、特定の腫瘍に対して放射線治療を行う際の重要なツールとなっています。

また、ルテチウムに関する研究は進んでおり、例えば176Luの半減期の測定に関する最近の研究も行われています。これにより、核時計としての役割や、地球や宇宙の年代測定においての重要性が更に高まっています。このように、ルテチウムの同位体は、物理学や医療の分野において、さまざまな応用が期待される重要な要素です。

参考文献

• - G. Audi, A.H. Wapstraらによる「Isotope masses from Ame2003 Atomic Mass Evaluation」, Nuclear Physics A729 (2003).
• - IUPACによる「Atomic weights of the elements. Review 2000」, Pure Applied Chemistry, Vol. 75, No. 6, pp. 683-800 (2003).
• - National Nuclear Data Center, Brookhaven National LaboratoryのNuDat 2.1データベース.
• - CRC Handbook of Chemistry and Physics, 85th Edition.
• - Hayakawa et al. (2023)による「Half-life of the nuclear cosmochronometer 176Lu measured with a windowless 4π solid angle scintillation detector」, Communications Physics 6, 299.

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