ルドルフ・ディールス

ルドルフ・ディールスは、1900年12月16日に有力な地主の息子として生まれました。彼の人生は、激動の20世紀前半のドイツ社会と深く結びついています。大学時代は学業よりも学生生活を謳歌し、決闘で顔に傷を負うなど、奔放な一面を見せました。

1930年、ディールスはプロイセン州内務省に入省し、共産主義対策の専門家としてキャリアをスタートさせました。彼は、共産主義者やナチ党などの急進的な政治活動を取り締まる任務に就きました。1933年1月、アドルフ・ヒトラーがドイツ首相に任命されると、ディールスの運命は大きく変わります。ナチ党幹部のヘルマン・ゲーリングがプロイセン州内相に就任し、ディールスはプロイセン州警察の政治警察部門の課長に抜擢されました。

1933年2月27日、ドイツ国会議事堂放火事件が発生すると、ディールスは事件の捜査と容疑者の尋問を担当しました。この事件をきっかけに、ナチスは共産主義者を弾圧し、ディールスは数千人もの共産主義者を逮捕しました。同年4月には、ゲーリングの命令によってプロイセン州の政治警察が統合され、「プロイセン州秘密警察局」、通称ゲシュタポが創設され、ディールスは初代ゲシュタポ長官に就任しました。

しかし、ディールスのゲシュタポ長官としての地位は長くは続きませんでした。親衛隊のハインリヒ・ヒムラーとラインハルト・ハイドリヒは、ディールスの権限を奪おうと画策し、1933年9月末、ゲーリングはディールスをゲシュタポ長官から解任し、ベルリン警察の副長官に左遷しました。しかし、その後、ディールスはゲーリングに呼び戻され、再びゲシュタポ長官に就任しました。しかし、1934年4月、ヒムラーがゲシュタポ監査官に任命されると、ディールスは再び長官の座を追われ、ハイドリヒが後任となりました。

ディールスはその後、親衛隊名誉大佐に任じられましたが、実質的な権限は大幅に制限されました。また、「長いナイフの夜」事件の際には、粛清リストに名前が加えられる危機もありましたが、ゲーリングによって救われました。ディールスは、ゲーリングの従妹と結婚していたこともあり、その後もゲーリングの庇護を受け、ベルリン警察長官代理やケルンの行政官などの高官職に就きました。

1940年代になると、ディールスはユダヤ人迫害に関わる命令を拒否するようになり、ゲシュタポから監視されるようになりました。ヒトラー暗殺計画に関与した疑いで逮捕・投獄されましたが、ゲーリングの助けで釈放されました。

第二次世界大戦後、ディールスはニュルンベルク裁判でゲーリングの弁護側証人として出廷しました。その後、西ドイツのニーダーザクセン州や内務省で勤務し、1953年に退官しました。1957年11月18日、狩猟中の事故によりその生涯を終えました。

ルドルフ・ディールスは、ナチス政権の中枢に身を置きながらも、その権力闘争に翻弄された複雑な人物でした。彼は、ゲシュタポの創設者でありながら、その犠牲者にもなりうる存在でした。彼の人生は、ナチスという巨大な権力機構の中で、個人の運命がいかに左右されうるかを物語るものでしょう。

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