ルノワール (映画)

ルノワール (2025年の映画)

映画『ルノワール』は、2025年6月20日に日本で公開される予定の作品です。脚本と監督は、前作で高く評価された早川千絵が務めます。主人公の少女を演じるのは、撮影当時11歳ながらオーディションで抜擢された新星、鈴木唯。本作は、日本を筆頭に、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシアが参加する国際共同製作作品として制作されました。

物語の舞台は、1987年の夏、東京郊外。病と向き合う父と、仕事に追われる母との三人暮らしを送る、感受性豊かで想像力に富んだ11歳の少女フキの視点を通して描かれます。フキが、それぞれに複雑な背景を抱える周囲の大人たちと関わりながら成長していく様子が、詩情豊かに紡がれていきます。

本作は、世界的に権威ある第78回カンヌ国際映画祭において、最高賞のパルム・ドールを競うコンペティション部門に選出され、世界の映画関係者の前で初めて上映（ワールドプレミア）されました。国際的な舞台での評価は、本作への期待を高める大きな要因となっています。

製作の背景

早川監督は、本作に自身の幼い頃の記憶や感情の断片を深く投影しています。制作にあたり影響を受けた作品として、スペインのビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』、日本の相米慎二監督の『お引越し』、台湾のエドワード・ヤン監督の『ヤンヤン 夏の想い出』といった、子どもを主人公にした名作たちの名前を挙げています。

映画のタイトル『ルノワール』は、フランス印象派の画家ピエール＝オーギュスト・ルノワールの名作『イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢』にちなんで名付けられました。劇中には、主人公フキが父にこの絵の複製画をねだる印象的なシーンが登場します。これは、早川監督自身が幼少期に父からルノワールの複製画を贈られた経験に基づいているとのこと。絵画が象徴するもの、親から子へと受け継がれるもの、そして失われていくものが、物語の重要な要素となっているようです。

2025年6月3日に行われた日本でのプレミア上映後、早川監督は観客とのティーチインの中で、本作を「余白を楽しむ映画」と表現しました。観る人それぞれが、スクリーンに映し出される出来事の間に自分自身の感情や解釈を見つけ、多様な感じ方をしてくれることを願っていると語っており、観客に深く寄り添う作品づくりを目指したことがうかがえます。

キャスト

沖田フキ (11歳)： 鈴木唯
物語の中心となる少女。マイペースで豊かな想像力を持つ。
沖田詩子 (フキの母)： 石田ひかり
仕事に追われ多忙な日々を送る。
沖田圭司 (フキの父)： リリー・フランキー
病気療養中の父親。
御前崎透： 中島歩
フキが物語の中で出会う大人。
北久理子： 河合優実
フキが出会う大人。
濱野薫： 坂東龍汰
フキが出会う大人。
その他： Hana Hope|Hana_Hope、高梨琴乃、西原亜希、谷川昭一朗、宮下今日子、中村恩恵らが出演しています。

スタッフ

監督・脚本を務めるのは早川千絵。

国際共同製作のため、各国の才能が集結しています。
エグゼクティブ・プロデューサーには小西啓介、水野詠子ら日本のメンバーに加え、ジョセット・カンポ＝アタイデ、マリア・ソフィア・アタイデ＝マルード、フラン・ボルジアなどの海外のプロデューサー陣が名を連ねています。
プロデューサー陣も水野詠子、ジェイソン・グレイ、クリストフ・ブリュンシェら国際色豊かなメンバーです。
撮影は浦田秀穂、編集はアンヌ・クロッツ、音楽はレミ・ブーバルが担当しています。

本作は「RENOIR」製作委員会が主体となり、ハピネットファントム・スタジオ、ローデッド・フィルムズ、鈍牛倶楽部などが参加。国際パートナーとして、Ici et Là Productions（フランス）、Akanga Film Asia（シンガポール）、Nathan Studios（フィリピン）、Daluyong Studios（フィリピン）、ARTE France Cinema（フランス）、KawanKawan Media（インドネシア）、Panoranime（インドネシア）が製作に参加しています。

ハピネットファントム・スタジオが製作幹事と配給を務め、文化庁文化芸術振興費補助金（国際共同製作映画）の助成を受けて制作されました。

早川監督自身の内面的な世界と、国際的な製作体制が融合して生まれた『ルノワール』は、カンヌでの高評価を経て、公開に向けて注目が高まっています。ひと夏の少女の瞳に映る、家族と世界の断片が、観る者に静かな感動と多様な解釈をもたらすことが期待されます。

もう一度検索