ルノートラック

ルノー・トラックス：フランスを代表する商用車・軍用車両メーカー

ルノー・トラックスは、フランスのサン＝プリエストに本社を置く自動車メーカーです。商用車と軍用車両の製造を専門としており、そのルーツは19世紀末にまで遡ります。長い歴史の中で、ルノー・トラックスは数々の変遷を経験し、現在はスウェーデンの大手自動車メーカー、ボルボ・グループの一員として、世界中で事業を展開しています。

起源と発展

ルノー・トラックスの起源は、1894年にマリウス・ベリエによって設立された自動車製造会社にあります。ベリエはエンジンの開発に情熱を注ぎ、そのエンジンを基に、ルイ・ルノーに自動車製造を依頼しました。これが、ルノー・トラックスのトラックとバス製造の始まりです。1907年には、ベリエ自身も車両製造を開始し、トラック製造に乗り出しました。

1956年、ルノーは自社ブランドでの商用車製造を一時中止し、子会社であったソムア（Somua）とラチィル（Latil）を統合してサヴィエム（Saviem）社を設立。サヴィエムブランドとしてトラックとバスの製造を行いました。小型商用車については、ルノーブランドでの製造が継続されました。

1975年、国有企業であったルノーは、フランスの産業政策に基づき、当時ミシュランが所有していたシトロエンの子会社であるベリエ（Berliet）を買収。1978年には、サヴィエムとベリエが合併し、ルノー・ビークルズ・インダストリーズ（Renault Véhicules Industrielles）が誕生しました。

国際的な協力と変革

1971年、サヴィエムは、ヨーロッパの大手トラックメーカー4社による共同開発グループ「Club of Four」に参加しました。このグループは、サヴィエム、ボルボ、DAF、マギルス=ドイツで構成され、共同でトラックの開発を行いました。この共同開発によって生まれたモデルは、1975年から2001年までサヴィエム（後のルノー）によって製造され、マック・ミッド=ライナー（Mack Mid-Liner）やマネージャー（Manager）として北米でも販売されました。

1980年には、再びルノーブランドでの販売が開始され、2002年には社名をルノーVI（Renault V. I.）に変更しました。

1997年、ルノーV. I.はフィンランドのトラック生産者であるシスオートと協力協定を締結。2002年には、中国の東風汽車とエンジンの製造契約を結び、国際的な連携を強化しました。

ルノー・トラックスは、FIA欧州トラック選手権にも参戦し、13,000ccのDXi13エンジンを搭載したルノー・プレミアムを走らせています。ルノートラックス-MKRテクノロジーチームは、2010年に総合2位と4位の成績を収めました。

ボルボ・グループへの統合と現在

2001年、RVIはルノーからボルボ・グループに売却され、2002年に社名をルノー・トラックスに変更しました。この買収により、ルノー・トラックスはボルボ・グループの一員として、グローバルな規模で事業を展開することになりました。

2017年、ボルボ・グループは軍用車部門ルノー・トラックディフェンスの売却を撤回し、2018年にアーキュスに改称しました。しかし、2024年にはボルボ・グループはアーキュスを売却しています。

所有権の変移

1996年の民営化後、ルノーのリストラの一環として、バスとトラック部門の売却が行われました。1999年には、カローザ（Karosa）バスとコーチ部門がルノー・ビークルズ・インダストリーズから切り離され、フィアットと合併してイヴェコのバス部門であるイリスバスとなりました。2003年には、イリスバスはイヴェコの完全子会社となり、ルノーで扱っていたバス車両は全てイリスバスブランドへと変更されました。

2001年1月2日、ルノーV. I.がボルボに売却され、2002年に社名をルノー・トラックスへと改名。2012年12月、ルノーはそれまで保有していたボルボの株式の全てを売却しました。

主な製品

ルノー・トラックスは、多様なニーズに対応するため、様々な種類のトラックを製造しています。

長距離輸送用トラック： Tハイ、Tなど、長距離輸送に適した大型モデル
建設工事用トラック： K、Cなど、建設現場での使用を想定した頑丈なモデル
一般配送用トラック： Dワイド、Dなど、市街地での配送に適した中型モデル
バン車両： マスターレッドエディション、マスターZ.E.など、小型で多様な用途に使えるモデル

過去には、パンチャー、マキシティ、マスコット、ミッドラム、プレミアム、マグナム、ケラックスなどのモデルも製造していました。

軍用車両としては、GBC 180、TRM 2000、TRM 4000、TRM 10000、ルノー・シェルパ、VAB装甲車などを製造しています。

ルノー・トラックスは、その長い歴史の中で培ってきた技術力と、ボルボ・グループの一員としてのグローバルなネットワークを活かし、これからも世界中の物流を支え続けていくでしょう。

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