ルパン三世 THE FIRST

『ルパン三世 THE FIRST』：シリーズ初のフル3DCGアニメーション映画

2019年 12月6日に公開された『ルパン三世 THE FIRST』は、モンキー・パンチ原作のアニメ『ルパン三世』シリーズにおける劇場版第6作目です。監督・脚本を務めたのは山崎貴氏で、「さぁ、はじめようぜ。」「すべてを盗め。」というキャッチコピーが印象的な作品となっています。

シリーズ初となるフル3DCGアニメーション

本作は、シリーズ史上初めてフル3DCGアニメーションで制作されました。海外展開も視野に入れた企画であり、原作者のモンキー・パンチ氏もかねてから3DCGアニメ化を構想しており、その実現を待ち望んでいたとコメントを残しています。しかしながら、パンチ氏は本作の完成を見ることなく2019年4月11日に逝去。本編終了後のクレジットには、パンチ氏が2017年7月に遺したメッセージが追悼テロップとして表示されています。

全国上映作品としては、1996年の『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』以来23年ぶり、また『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』以来6年ぶりの単独劇場版作品となりました。同年5月には『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』が限定公開されていますが、1年間に『ルパン三世』の新作映画が2本公開されるのは本作が初めてです。

1960年代後半を舞台にした冒険活劇

ストーリーは、ルパン一世アルセーヌ・ルパンも盗み出すことができず、第二次世界大戦中にはナチスがその存在を追っていたという伝説のお宝、「ブレッソン・ダイアリー」を巡る物語です。時代設定は1960年代後半。監督の山崎貴氏は、原作が描かれた時代とルパン本来のロマンに合致すると考え、また「ルパンにハイテクは似合わない」という自身の考えからこの時代を選んだと語っています。第二次世界大戦当時の飛行機などのガジェットも登場するなど、時代考証にも配慮が見られます。

過去作へのオマージュと新たな試み

本作では、『ルパン三世』を象徴するシーンを数多く取り入れています。ルパンの衣装は『ルパン三世ルパンVS複製人間』に近い赤のジャケット、黄色のネクタイ、黒のシャツとパンツという配色で、五右ェ門の衣装はTV第1シリーズを踏襲しています。次元はベストを着用し、鼻の下にも髭を生やしています。一方で、「ルパンダイブ」などのお色気要素は意図的に排除されています。

サブタイトル「THE FIRST」には、「3DCGルパンの初お披露目」、「世界で一番になるという願い」、「ルパン一世にまつわる物語」という意味が込められています。

これまで山崎監督作品に携わってきた制作会社ROBOTは、本作には参加していません。また、ルパンたちがカップヌードルを食べるシーンも印象的です。そして、劇場映画シリーズ第1作から次元大介役を務めてきた小林清志氏にとって、本作は最後の作品となりました。

制作におけるこだわり

山崎監督は『ルパン三世カリオストロの城』を強く意識して制作に臨んだと語っており、バンド・デシネを意識した色彩も特徴です。脚本制作には、長編邦画では初となるハリウッド映画の手法が採用されました。ラフな絵コンテを元にストーリーボードを作成し、音楽やセリフを加えたストーリーリールを関係者に上映、意見交換を行いながら脚本を練り上げていったとのことです。

音楽は大野雄二氏が担当し、テレビ版よりもゴージャスなアレンジが施されています。大野氏自身も3D作品への参加は初めてで、長期間に渡る制作過程や、初期段階ではカクカクしていた動きが完成版では滑らかに仕上がっていたことに驚いたと語っています。大野氏は「ルパン三世は最高のマンネリ」と述べ、監督の山崎氏について「ルパンの作り方に対して気を遣ってくれていた」「みんなが求めているルパンを作ろうとしていた」と高く評価しています。

プレスコ方式を採用し、アフレコは公開約2年前に行われました。公開後も追加収録が行われたようです。

ストーリーの詳細

物語は、第二次世界大戦中のフランスから始まります。考古学者ブレッソン教授は、ある日記とブローチを家族に託して逃亡しますが、ナチスに襲われ命を落とします。娘夫婦も事故死し、孫娘レティシアだけが生き残ります。ナチスの兵士ランベールは、レティシアからブローチを奪って逃走します。

十数年後、ブレッソンダイアリーが展示されている博物館で、ルパンの予告状が届きます。ルパンは日記を奪いますが、不二子に奪われ、銭形警部に逮捕されます。レティシアもまた日記を狙っており、ルパンと行動を共にします。ルパンは日記の奪還、そしてエクリプスと呼ばれるお宝を狙います。

物語は、ルパンとレティシア、そしてランベールや謎の男ゲラルトらによる、ブレッソンダイアリーとエクリプスを巡る争奪戦、そして第二次世界大戦に隠された秘密へと展開していきます。ルパンたちは、様々な困難を乗り越え、幾多の試練を潜り抜け、最後にたどり着く真実とは？

登場人物

本作には、ルパン三世、次元大介、石川五ェ門、峰不二子、銭形警部といったお馴染みのキャラクターに加え、レティシア、ランベール、ゲラルトといったオリジナルキャラクターが登場します。それぞれのキャラクターの個性と背景が、物語に深みを与えています。

評価

本作は、3DCGによる映像表現や音楽、アクションシーンなどが高く評価されていますが、ストーリー展開やキャラクター描写について賛否両論があります。過去作へのオマージュが目立つ一方で、オリジナル要素が少ないという意見や、ストーリーの展開が予定調和すぎるという意見もあります。しかしながら、テンポの良い展開や、ルパンシリーズの魅力をしっかりと捉えているという評価もあります。

受賞歴

本作は、第43回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞しています。

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