ルピナス属

ルピナスとは

ルピナス（学名: Lupinus）は、マメ科ルピナス属に分類される植物の総称です。その名前は、ラテン語でオオカミを意味する「lupus」に由来し、これはルピナスの吸肥力の強さを貪欲なオオカミに例えたものとされています。和名では、掌状複葉の葉の形から「ハウチワマメ属（葉団扇豆属）」、花の咲き方がフジに似ていることから「ノボリフジ（昇藤）」とも呼ばれます。

特徴

ルピナスは、耐寒性または半耐寒性の一年草または多年草で、一部には灌木状になるものもあります。地中海沿岸地域や南北アメリカ、南アフリカなどに200種以上が分布しています。草丈は50cmから180cmほどに成長し、春から初夏にかけて、蝶形の花が多数咲いた雄大な総状花序を形成します。特に宿根ルピナスは、花穂が60cmにも達することがありますが、暑さに弱いため、温暖な地域での栽培には注意が必要です。

ルピナスの名前の由来については諸説あります。牧野富太郎は、どんな土地でも育つルピナスのたくましさがオオカミを連想させると述べました。一方、塚本洋太郎は、ルピナスが大地を破壊すると畏怖されていたことが、オオカミのイメージにつながったと考察しています。また、中村浩は、ルピナスの豆の苦味が、苦虫を噛み潰したような表情を連想させることから、語源はギリシア語で悲哀を意味する「リュペー」であると推定しています。

主な栽培種

ルピナスには、様々な種類があり、それぞれに特徴があります。

黄花ルピナス (Lupinus luteus): ヨーロッパ南部原産の一年草。甘い香りのある黄色い花を咲かせます。ルピナスビーンズとして食用にも利用されます。
傘咲きルピナス (Lupinus hirsutus): 南欧原産で、葉が大きく傘のように見えるのが特徴です。藤色または藍色の花を咲かせ、中心部の白い模様とのコントラストが美しいです。
ラッセルルピナス (Lupinus polyphyllus): 宿根ルピナスとも呼ばれ、紫、藤色、樺色、紅、白など、多様な花色があります。暑さに弱いため、暖地では一年草として扱われることがあります。
アルボレウスルピナス (Lupinus arboreus): カリフォルニア原産の小低木で、黄色または紫色の花を咲かせ、強い香りがあります。
テキサスルピナス (Lupinus texensis): 白から青色の花を咲かせます。
白花ルピナス (Lupinus albus): 白から乳白色の花を咲かせます。ルピナスビーンズとして食用にも利用されます。
* 青花ルピナス (Lupinus angustifolius): 白から青紫色の花を咲かせます。

利用

ルピナスは、観賞用としてだけでなく、食用や緑肥としても利用されています。

食用

ルピナスの豆は、「ルピナスビーンズ」として知られ、塩ゆでにしてビールのつまみとして食べられています。また、大豆アレルギーの代替食品としても注目されており、きな粉や豆乳、豆腐、ヴィーガンソーセージなどの原料として利用されています。

ただし、多くのルピナス豆には苦味と毒性を持つアルカロイドが含まれているため、食用にするには、数日間水に浸してアルカロイドを取り除く必要があります。ドイツ連邦リスク評価研究所は、苦味を感じたら食べないように注意喚起しています。

緑肥

ルピナスは、根粒菌と共生して大気中の窒素を固定する能力があるため、緑肥としても利用されています。また、土壌中の難溶性のリン酸化合物を可溶化する能力も持っています。

栽培のポイント

ルピナスは移植を嫌うため、種を直播きするか、ポットに蒔いて根を傷つけないように移植するのがおすすめです。播種時期は9月頃ですが、暑さに弱いラッセルルピナスは10月に入ってからの方が良いでしょう。種を一昼夜ぬるま湯に浸けてから蒔くと発芽しやすくなります。日当たりと排水の良い、やや乾燥した場所を好みます。酸性土壌を嫌うため、石灰で中和しておくと良いでしょう。

ルピナスは、花壇の背景を彩る植物として、また切り花としても楽しむことができます。

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