緑肥

緑肥の概念とその利点

緑肥（りょくひ）とは、元気な緑色植物を田畑に直接漉き込み、それを肥料として活用する手法です。この目的で利用される植物のことを「緑肥作物」と呼び、土壌の健康を促進すると共に、風雨による表土の流出を防ぐ効果も期待できます。英語ではこれらの植物をカバークロップ（Cover crop）と称します。

緑肥の歴史的背景

第二次世界大戦後、硫安や尿素などの化学肥料が手に入りやすくなり、窒素肥料の供給が容易になりましたが、それ以前は窒素を含む肥料は非常に貴重なものでした。人々は糞尿や捕れすぎた魚、食用に適さない海藻（例：ホンダワラ）を利用して、肥料を手に入れていました。緑肥作物は、自然に生えている雑草と同様に、選択的に使われることがあり、土壌の性質や栽培したい作物に応じて、適切な植物が選ばれます。

緑肥作物の選択

選ばれる緑肥作物には、特にマメ科（Fabaceae）の植物が多いです。その理由は以下の通りです。

• - 窒素固定: マメ科植物は、共生する菌類との関係で土壌中の窒素を固定し、これが後に育てる作物にとって有益です。
• - 耐寒性: 多くのマメ科植物は耐寒性があり、秋に植えて翌春に漉き込むことができます。
• - 深根性: 根が長い植物が多く、通常の作物では吸収できない深層の養分も取り込むことができます。
• - 早期分解: 漉き込まれた後、比較的速やかに分解され、土壌中に早く栄養を供給します。
• - 通気性と排水性の向上: 実際の栽培で土壌の質を改善し、通気性や排水性を向上させる効果があります。

緑肥の効果

緑肥を利用することで得られる具体的な効果は以下の通りです。

• - 土壌構造の改善: 土の構造が向上し、水はけや保水力が高まり、作物の生育に適した環境が整います。
• - 肥料の削減: 窒素固定によって、後に施肥する際の窒素肥料の量を削減できます。
• - 微生物の活性化: 有機物が増えることで、土壌中の微生物が増殖し、生態系のバランスが改善されます。
• - 病害虫の抑制: 微生物のバランスが整うことで、病害虫の発生を抑える効果も期待できます。
• - 土壌の塩分濃度の低減: 特に施設野菜の土壌では、塩類濃度を下げることが重要です。
• - センチュウの防御効果: マリーゴールドなどの特定の植物はセンチュウに対する防御効果があり、後の作物への被害を軽減することができます。
• - 有害液体の生成: ただし、分解過程で有害な酸が生成されることもあるため、石灰施肥や排水管理が必要です。

代表的な緑肥作物

緑肥として一般的に利用される植物には以下のようなものがあります。

• - マメ科: ウマゴヤシ、ムラサキウマゴヤシ、エビスグサ、クローバー、セスバニア、ダイズ、ベニバナツメクサなど。
• - イネ科: エンバク、トウ[[モロコシ]]、ライ麦、ソルゴーなど。
• - その他: ヒマワリやマリーゴールドなども利用されます。

このように、緑肥は多様な植物を通じて土壌改良や持続可能な農業の実現に貢献している重要な手法です。

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