ルーサー・バーバンク

ルーサー・バーバンク：植物界の革命家

ルーサー・バーバンク (1849-1926) は、アメリカの植物学者、園芸家、そして類まれな育種家として知られています。彼は、数々の植物の品種改良に成功し、現代農業に多大な貢献を果たしました。特にジャガイモとサボテンの改良は、彼の名を不朽のものとした業績です。

バーバンクはマサチューセッツ州ランカスターで15人兄弟の13番目として生まれました。彼の生家は農場であり、幼少期から植物に囲まれた環境で育ちました。限られた教育しか受けませんでしたが、天性の才能と強い探究心で植物の研究に没頭していきました。

21歳で父親を亡くした後、バーバンクは遺産を元にマサチューセッツ州で土地を購入し、そこで独自のジャガイモ品種「バーバンクポテト」を開発しました。この成功によって得た資金を元に、彼はカリフォルニア州サンタローザに移住。そこで広大な農園と温室を建設し、本格的な植物の交配と育種に取り組み始めました。

彼の育種技術は革新的で、多種多様な植物を対象に、徹底した観察と選抜を繰り返すことで、驚異的な成果を上げました。その中には、現在でも広く栽培されている、赤茶色の表皮を持つ「ラセット・バーバンク」種ジャガイモも含まれています。この品種は、アメリカにおけるジャガイモ生産において重要な地位を占めています。特にアイダホ州は、その主産地として知られています。

バーバンクの業績はジャガイモだけではありません。彼は、美しいシャスタ・デイジー、棘のないサボテン、改良された桃やプラム、ネクタリン、そしてホワイトブラックベリーなど、実に800種類以上の新しい植物品種を生み出しました。これらの品種は、その品質の高さや栽培の容易さから、世界中の農家や園芸愛好家に広く受け入れられています。なかでもトゲのないブラックベリーの開発には30年もの歳月を費やしており、彼の粘り強さと情熱がうかがえます。

バーバンクの功績を称え、ルーサー・バーバンク協会が設立されました。この協会は会報の発行や、彼の業績を紹介する12巻にも及ぶ書籍を出版するなど、彼の思想と技術の継承に尽力しています。

彼の生涯と業績は、多くの書籍や伝記にも記されています。日本語で書かれたものとしては、『植物の育成』全6巻（中村為治訳、岩波文庫）や、栗原基による『バーバンクと植物品種の創造』、『植物王バーバンク 「彼はどうやって新品種を創作したか」』などが挙げられます。これらの文献は、彼の驚くべき人生と、植物界に与えた大きな影響を理解する上で貴重な資料となります。

ルーサー・バーバンクは、単なる植物学者や育種家ではありませんでした。彼は、植物を改良するだけでなく、その潜在能力を最大限に引き出し、人々の生活を豊かにするための道を切り開いた、真の植物界の革命家であったと言えるでしょう。彼の残した品種は、今も世界中で人々に恵みをもたらし続け、彼の偉大な功績は、これからも語り継がれていくに違いありません。

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