ルージュ (1987年の映画)

50年の時を超えた愛──香港映画『ルージュ』の物語

1987年、香港を舞台に、現代の新聞記者ユンと、50年前に亡くなった幽霊の女性ユーファの奇妙な出会いが描かれる映画『ルージュ』。本作は、スタンリー・クワン監督、ジャッキー・チェン製作という豪華布陣で贈られる、恋愛ファンタジー作品です。アニタ・ムイとレスリー・チャンという、香港映画史に輝くスターたちの共演も話題を呼びました。

物語は、現代の香港で新聞記者として働くユンから始まります。彼は同僚の女性記者チョーと同棲しながら、日々忙しい日々を送っています。ある日、古風なチャイナドレスを着た謎の女性ユーファが、新聞社を訪ねてきます。彼女は「尋ね人」広告の掲載を依頼しに来たのですが、代金が足りず、そのまま姿を消してしまいます。しかし、その後もユーファはユンの前に現れ、彼を不思議な形で執拗に追いかけるのです。

実はユーファは、50年以上も前にこの世を去った幽霊でした。53年前、彼女は高級遊郭「イーホンロウ」で働く美しい芸妓でした。そこで彼女は裕福な問屋の息子、チャン十二少と恋に落ち、結婚を誓い合います。しかし、十二少はすでに従姉妹のソッイーとの結婚が決まっており、ユーファは最初から内縁の妻としてしか扱われませんでした。

嫉妬と絶望に駆られたユーファは、十二少に睡眠薬を飲ませ、無理心中を図り、命を落とします。あの世で50年以上もの間、十二少と再会することを願い続けたユーファは、ついにこの世に現れ、彼を探す旅に出たのです。

ユーファの切ない想いに心を動かされたユンとチョーは、彼女の願いを叶えようと奔走します。ユーファの命日である3月8日までに、十二少と再会させるため、費用を負担して「尋ね人」広告を掲載するのです。しかし、広告を見た人物は現れませんでした。

諦めきれないユンとチョーは、古道具屋で古いゴシップ新聞を発見します。そこには、心中事件で十二少が生き残っていたという衝撃の事実が書かれていました。事業に失敗し破産した十二少は、今は年老いた三文役者として、撮影スタジオを転々としながら暮らしているとのことでした。

この世に現れたことで、次第に弱っていくユーファを連れて、ユンとチョーは十二少を探す旅に出ます。そして、ついに撮影スタジオで十二少を発見します。しかし、ユーファは53年前の出来事を許すことができず、十二少から贈られた大切なルージュ入れのペンダントを返すと、一人静かにあの世へと帰って行ったのです。

『ルージュ』は、幽霊の女性の切ない恋物語を通して、生と死、愛と別れ、そして人間の業を問いかける、深い感動を与えてくれる作品です。アニタ・ムイの繊細な演技、そしてレスリー・チャンの哀愁漂う姿は、多くの観客の心を掴みました。劇場未公開作品ではありましたが、VHS、DVD、そしてデジタル上映と、時代を超えて多くの人に愛され続ける名作として、その存在感を示し続けています。数々の映画賞を受賞しており、その高い評価は、作品が持つ普遍的な魅力を物語っています。李碧華の原作小説も合わせて、ぜひこの美しくも悲しい物語に触れてみてください。

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