ルース台風

ルース台風（昭和26年台風第15号）

1951年10月、日本列島に大きな爪痕を残したルース台風（国際名：Ruth）は、観測史上まれに見る強力な勢力と、異例の速度で日本を縦断した台風です。この台風は、10月9日にグアム島西方海上で発生し、発達しながら北西に進みました。10月12日には沖縄の南海上で最盛期を迎え、中心気圧924hPaを記録しました。その後、進路を北北東に変え、13日夜には沖縄本島と宮古島の間を通過し、東シナ海へと進みました。

上陸と異例のスピード

10月14日19時頃、ルース台風は鹿児島県串木野市付近に上陸しました。上陸時の中心気圧は935hPaと非常に低く、統計開始以降で4番目に低い気圧で日本に上陸した台風となりました。特筆すべきは、上陸後の台風の進行速度で、時速100km前後の猛スピードで九州を縦断し、中国地方、日本海へと進みました。この異例のスピードから「韋駄天台風」とも呼ばれました。その後、北陸・東北地方を通過し、15日夕方には三陸沖に抜け、16日には温帯低気圧に変わりましたが、その後再発達し、950hPaまで勢力を盛り返しました。また、この台風は北陸沖で中心が消滅し、関東の東沖に新たな中心が発生するという「ジャンプ現象」を起こしました。

全国的な暴風と大雨

ルース台風は勢力が非常に強く、暴風域も広範囲に及んだため、全国各地で暴風となりました。特に、宮崎県細島では69.3m/s、愛媛県佐田岬では67.1m/sという観測史上屈指の最大風速を記録しました。また、台風の影響で九州、四国、中国地方では大雨となり、山口県では河川の氾濫や土砂災害が多発し、多数の死者・行方不明者が発生しました。

強力な勢力と高潮被害

ルース台風は、10月中旬という時期にもかかわらず、上陸時の勢力が非常に強く、高潮による被害も発生しました。台風本体も大きかった上に、猛スピードで移動したため、広範囲で強風が吹き荒れました。特に、鹿児島県口永良部島では、島内の民家の半分が倒壊する大きな被害が出ました。山口県玖珂郡では、錦川一帯が氾濫し、甚大な被害が発生しました。

災害派遣と水不足解消

当時、干ばつで各地で水不足が深刻化していた1951年の夏でしたが、ルース台風の降雨により、各地で水不足が一時的に解消されました。水力発電量の低下により計画停電が頻発していた関東地方では、猪苗代湖周辺の降雨が新聞記事になるほどでした。また、ルース台風による甚大な被害に対し、当時の吉田茂首相の命令により、警察予備隊（現在の陸上自衛隊）が発足後初の災害派遣出動を行い、被災地の救援活動にあたりました。

記録された被害

ルース台風によって記録された被害は以下の通りです。

死者：572名
行方不明者：371名
負傷者：2,644名
住家全壊：24,716棟
住家半壊：47,948棟
住家の床上浸水：30,110棟
住家の床下浸水：108,163棟

これらの被害状況からも、ルース台風がもたらした被害の甚大さがうかがえます。

外部リンク

災害をもたらした気象事例（ルース台風） - 気象庁
* デジタル台風：台風195115号（RUTH）- 総合情報（気圧・経路図） - 国立情報学研究所（北本朝展）

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