ルーズコート・フィールドの戦い

ルーズコート・フィールドの戦い：薔薇戦争の一幕

ルーズコート・フィールドの戦い（Battle of Lose-coat Field）は、1470年3月12日に勃発した、薔薇戦争における重要な戦闘の一つです。エンピンハムの戦い（Battle of Empingham）とも呼ばれています。

戦いの背景

エッジコート・ムーアの戦いでの敗北後、エドワード4世は弟であるグロスター公リチャード（後のリチャード3世）の助けを得て、権力を回復しました。しかし、ウォリック伯は以前と同様に、王の政策に影響力を行使できない状況に置かれていました。彼は、自身の意のままに国政を動かすため、別の王弟であるクラレンス公ジョージ（ウォリック伯の義理の息子）を王位に就けようと画策していました。

反乱の勃発

1470年、ウォリック伯の親戚であるロバート・ウェルズ卿が、エドワード4世に対して反旗を翻す際にウォリック伯に支援を求めました。ウォリック伯は、エドワード4世を打倒する好機と捉え、ウェルズ卿はリンカーンシャーで兵士を集め、反乱軍の準備を進めました。
リンカーンシャーでの不穏な動きは、エドワード4世の知るところとなり、彼は3月4日に兵を集結させました。国王軍の派遣の知らせは、地元にパニックを引き起こし、「王はエッジコート・ムーアの戦いの反乱軍を裁きに来る」という噂が広まりました。ウォリック伯とクラレンス公の扇動を受け、ウェルズ卿は自らをリンカーンシャーの人々の指導者と宣言し、国王への抵抗を呼びかけました。

国王は、クラレンス公とウォリック伯から「国王を援護するため北進する」という手紙を受け取り、彼らに精兵の指揮権を与えました。その後、国王は反乱軍がレスターに進路を変更したという情報を得たため、ウォリック伯とクラレンス公は「スタンフォードの反乱軍攻撃」を名目に国王から離れることに成功しました。

ウェルズ卿は国王から、反乱軍の解散を求める手紙を受け取りました。さもなければ、捕らえられていた彼の父、ウェルズ男爵リチャードを処刑すると脅迫しました。ウェルズ卿は直ちに軍をスタンフォードへ向かわせました。
ウェルズ卿がウォリック伯とその軍勢と合流できなかったことが、エドワード4世の信頼を深めることになりました。

戦闘の展開

エドワード4世の偵察隊は、反乱軍がスタンフォードから約8km、ラトランドのエンピンハム近郊に布陣していることを報告しました。エドワード4世は、ウェルズ卿の軍の正面に戦線を展開し、両軍から見える位置でウェルズ卿の父であるウェルズ男爵とその協力者トマス・ディモック卿を処刑しました。

この処刑は、反乱軍の兵士たちの士気を大きく揺るがし、「ウォリックはどうした！」「クラレンスはどうした！」という叫び声が上がりました。砲撃の後、エドワード4世は軍に突撃を命じました。しかし、国王軍が到達する前に、反乱軍の戦線は崩壊し、兵士たちは四散して撤退を開始しました。

反乱軍の兵士たちが着用していた上着は、ウォリック伯とクラレンス公が提供したものでした。総崩れが始まると、兵士たちはその上着を脱ぎ捨てて逃走しました。この光景から、この戦いは「ルーズコート・フィールド（Losecote Field）：捨てられた上着の丘」と呼ばれるようになったのです。

ロバート・ウェルズ卿と彼の部隊の指揮官であるリチャード・ウォーレンは捕らえられ、1週間後に処刑されました。



参考文献
* トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

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