ルーマニア・テレビ

ルーマニア・テレビ（TVR）

ルーマニア・テレビ、正式名称Televiziunea Română（TVR）は、ルーマニアの公共放送局として、国内の主要なテレビ放送ネットワークを運営しています。

創設と発展

TVRは1956年12月31日に、ルーマニア初のテレビ局として放送を開始しました。当初の放送センターは、首都ブカレストにあるモリエール通りの映画スタジオ内に置かれました。その後、1968年には第2チャンネルであるTVR2の放送も開始され、国内におけるテレビ放送の基盤が築かれていきました。

チャウシェスク政権下の厳しい時代

ニコラエ・チャウシェスクによる独裁政権下において、TVRは体制による統制を強く受けることになります。1983年にはカラー放送が導入されたものの、1985年からはエネルギー危機や国家の倹約政策といった名目の下、その放送時間はわずか2時間にまで大幅に短縮されました。1989年のルーマニア革命勃発までの期間、短縮された2時間枠の番組編成は極めて硬直化しており、以下のようなスケジュールで固定されていました。

午後7時53分：国歌演奏、国旗への賛歌
午後8時00分：オープニングニュース
午後8時20分：チャウシェスク大統領を称賛する内容の番組（音楽、ドキュメンタリーなど）
午後9時00分：演劇、オペラ、または社会主義体制を賛美する内容の映画など
午後9時50分：ニュース
午後10時00分：放送終了

この編成からも明らかなように、番組内容はチャウシェスク個人や共産党体制を称揚するプロパガンダに偏重しており、国民に提供される情報は極度に制限されていました。後に放送時間は3時間に延長されたものの、その統制された内容は変わることはありませんでした。

革命後の変革

1989年12月に発生したルーマニア革命では、反政府勢力がTVRの放送局を占拠し、ここから国民に向けた革命の状況を伝達しました。局名も一時的に「自由ルーマニア放送（Televiziunea Română Liberă、TVRL）」へと変更され、新たな時代の幕開けを告げる象徴的な存在となりました。革命の終結後、TVRLは再びTVR1として正式に改称され、放送が停止されていたTVR2も再開されるなど、公共放送としての体制が再構築されていきました。

国際関係と経営問題

革命後、TVRは民主化されたルーマニアにおける主要な情報媒体としての役割を担うようになりますが、経営面での課題に直面します。2016年4月には、多額の債務を理由に欧州放送連合（EBU）からの脱退を余儀なくされました。この脱退により、長年にわたりルーマニアが参加してきたユーロビジョン・ソング・コンテストへの出場資格や、オリンピックなどの主要な国際スポーツイベントの放映権を剥奪される事態となりました。しかし、翌2017年にはEBUとの間で債務問題に関する合意が成立し、TVRは無事EBUへの再加盟を果たし、国際的な放送活動への復帰を果たしました。

TVRの歴史は、そのままルーマニア現代史の変遷を映し出す鏡とも言えます。開局から現在まで、政治体制の変化、国民生活の変化、そして国際社会との関係性の変化と共に、その姿を変えてきたのです。

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