ルー・リード

ルー・リード：革新的な音楽性と深い詩世界

ルー・リード（Lou Reed、1942年3月2日 - 2013年10月27日）は、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン出身のミュージシャンです。本名ルイス・アレン・リード（Lewis Allen Reed）として生まれ、ユダヤ系の血を引いています。シラキューズ大学在学中には、詩人のデルモア・シュワルツに師事し、詩作の才能を開花させました。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドでの活動

1965年、ルー・リードはヴェルヴェット・アンダーグラウンドを結成し、ボーカリスト兼ギタリストとして活動を開始しました。バンドの中心人物として、アヴァンギャルドな実験性と翳りを帯びたメロディを融合させた独自の音楽性を創り上げました。代表曲には、「ヘロイン」「僕は待ち人」「スウィート・ジェーン」「ロックン・ロール」などがあり、その音楽は後のパンク・ロック、ニュー・ウェイヴ、オルタナティヴ・ロックに大きな影響を与えました。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドでの活動はわずか4年ほどでしたが、その革新性はロックの歴史における「ビッグ・バン」と評されています。

ソロ活動の展開

1970年にヴェルヴェット・アンダーグラウンドを脱退後、ルー・リードはソロ活動を開始しました。1972年にアルバム『ロックの幻想』でソロデビューを果たし、その後も『トランスフォーマー』、『ベルリン』など、数々の名作を発表しました。『トランスフォーマー』に収録された「ワイルド・サイドを歩け」は、グラムロックの文脈でヒットし、彼の代表曲の一つとなりました。1973年の『ベルリン』では、内省的で陰鬱な恋愛を映画的に描き、商業主義に迎合しない姿勢を示しました。しかし、次作の『死の舞踏（Sally Can't Dance）』は、オーヴァープロデュースとも言える作風で、自身最大のヒットを記録しました。

多様な音楽性への挑戦

アリスタ・レコード時代には、自身のポップ観とロック観の融合を追求し、コンスタントな活動を続けました。アレンジ面では、スタンダードなロックサウンドに非クラシカルなストリングスやホーンセクションを導入したり、ファンク、フリージャズ、AORなどの要素を取り入れたりするなど、多様な音楽性に挑戦しました。また、楽曲の長大化やアコースティック面の強調、バックバンド・メンバーとの共作も試みました。RCA復帰後の『ブルー・マスク』では、ロバート・クインのギターを得て、ラフでノイジーなロックサウンドに転換し、『レジェンダリー・ハーツ』では、よりオーソドックスなロックへと回帰しました。

さらなる進化

1989年のアルバム『ニューヨーク』では自身のルーツと向き合い、翌年にはアンディ・ウォーホルの追悼としてジョン・ケイルとの共作『ソングス・フォー・ドレラ』を制作しました。1990年代前半には、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを再結成し、その後も『マジック・アンド・ロス』、『セット・ザ・トワイライト・リーリング』、『エクスタシー』といったアルバムを発表し、その存在感を示しました。2003年には、エドガー・アラン・ポーの「大鴉」を題材にした『ザ・レイヴン』をリリースし、自身の詩世界と古典文学を融合させた新たな境地を切り開きました。晩年の作品である2011年の『ルル』では、メタリカとコラボレーションし、ヴェルヴェッツ時代を彷彿とさせる退廃的な雰囲気と、メタリカらしいヘヴィなサウンドを融合させました。

時代に挑戦し続ける姿勢

ルー・リードは、その時代やアルバムごとにアプローチを変化させながら、強烈な個性を貫き、作品をポピュラーなロックサウンドとして成立させる手腕を持っていました。同時に、アプローチの転換によってファンやメディアを困惑させるような「問題作」を発表することもありました。二枚組のノイズ作品『無限大の幻覚(Metal Machine Music)』や、瞑想用に制作されたアンビエント作品『Hudson River Wind Meditations』などがその例です。しかし、その偏屈とも言えるこだわりは、多くのファンを魅了し続け、音楽評論家や他のミュージシャンからも広く賞賛されています。

私生活と晩年

ルー・リードは、私生活では長らくバイセクシュアルであるとされ、三度の結婚を経験しました。最後の結婚相手であるヴァイオリニストのローリー・アンダーソンとは、長年のパートナーシップを経て2008年に結婚しました。2013年に肝臓移植手術を受けましたが、同年10月27日、肝臓疾患の関連病のため71歳で亡くなりました。彼の死後、多くのミュージシャンが追悼のコメントを寄せました。

ルー・リードは、ロックンロール、フォーク、ソウルといったトラディショナルな音楽を源流としながら、自身の特徴的なボーカルやギターを時に無視してでも、時代と向き合いながら独自の道を歩み続けました。その多彩な音楽性と、常に変化を恐れない姿勢は、後世の音楽家たちに多大な影響を与え続けています。

ディスコグラフィー

ルー・リードは、数多くのスタジオアルバム、ライブアルバム、コンピレーションアルバムを発表しています。主な作品は以下の通りです。

スタジオ・アルバム
『ロックの幻想』 (1972)
『トランスフォーマー』 (1972)
『ベルリン』 (1973)
『死の舞踏』 (1974)
『無限大の幻覚』 (1975)
『コニー・アイランド・ベイビー』 (1976)
『ロックン・ロール・ハート』 (1976)
『ストリート・ハッスル』 (1978)
『警鐘』 (1979)
『都会育ち』 (1980)
『ブルー・マスク』 (1982)
『レジェンダリー・ハーツ』 (1983)
『ニュー・センセーションズ』 (1984)
『ミストライアル』 (1986)
『ニューヨーク』 (1989)
『ソングス・フォー・ドレラ』 (1990) ※ジョン・ケイルとのコラボレーション
『マジック・アンド・ロス』 (1992)
『セット・ザ・トワイライト・リーリング』 (1996)
『エクスタシー』 (2000)
『ザ・レイヴン』 (2003)
『ルル』 (2011) ※メタリカとのコラボレーション

ライブ・アルバム
『ロックン・ロール・アニマル』 (1974)
『ルー・リード・ライブ』 (1975)
『テイク・ノー・プリズナーズ』 (1978)
『ライブ・イン・イタリー』 (1983)
『パーフェクト・ナイト』 (1998)
『ライブ・イン・ニューヨーク'72』 (2001)
『バタクラーン72』 (2003) ※ジョン・ケイル、ニコとの共演
『アニマル・セレナーデ』 (2004)

コンピレーション・アルバム
『思考と象徴のはざまで』(1992)
『ディファレント・タイムズ - ルー・リード70'sコレクション』(1996)
『ザ・ベスト・オブ・ルー・リード』 (1999)
『NYCマン ヒストリー・オブ・ルー・リード』 (2003)

ルー・リードの音楽は、今もなお多くの人々に愛され、影響を与え続けています。

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