レイズライン

2002年に製作された日本のインディーズ映画『レイズライン』（LEY'S LINE）は、特定の社会問題と都市伝説めいた雰囲気を融合させた異色の作品です。

数多くの飛び込み自殺が発生していることで知られるJR中央線を題材に据え、その路線にまつわる見えない力や呪いを描いています。本作の製作スタイルは極めてユニークであり、インディーズ映画ならではの大胆さが際立っています。

特にJRの駅構内や走行中の車内で撮影されたシーンの大部分は、関係当局からの正式な許可を得ず、いわゆるゲリラ撮影や隠し撮りによって行われました。映画の冒頭では、この異例の撮影手法について明示するテロップが挿入されており、作品自体の挑戦的な姿勢を物語っています。舞台となる中央線のリアルな空気感は、こうした手法によって捉えられています。

『レイズライン』は、その独特なテーマと製作手法が評価され、複数の映画祭で高い評価を獲得しました。2002年の第6回みちのく国際ミステリー映画祭では、オフシアターコンペティション部門において、グランプリと観客賞のW受賞という快挙を成し遂げました。同年には、若手映画作家の登竜門として知られる第3回TAMA NEW WAVEのビデオ部門でも特別賞を受賞。さらに、2003年の第5回インディーズムービー・フェスティバルでは準グランプリに輝くなど、当時のインディーズ映画シーンにおいて注目を集めた作品です。

映画の核となるのは、JR中央線という路線そのものが持つとされる不穏な空気感です。作中では、中央線は事故や自殺が頻発する「呪われた路線」として描かれます。物語の主人公は、奇しくも二人とも中央線の沿線に暮らす一組の若いカップル。彼らはごく普通の恋愛関係を築こうとしますが、なぜか二人で会おうとするたびに、予期せぬ事故や不可解なトラブルに見舞われ、結局会うことができなくなってしまいます。列車遅延、人身事故、その他様々な障害が彼らの逢瀬を阻むのです。

なぜ二人は会えなくなってしまったのか？彼らの関係を引き裂こうとする、中央線に潜む見えない力、その正体とは一体何なのか？映画は、この根源的な問いを観客に投げかけながら進行していきます。単なる恋愛ドラマに終わらず、特定の場所にまつわる「気」や「歴史」が人間に与える影響、あるいは現代社会における都市伝説的な恐怖を描こうとする意欲的な試みと言えるでしょう。

本作を彩るキャスト陣には、金子梅華、祖父江唯、高藤健五、西冬彦、高橋亜子、大友麻帆といった面々が名を連ねています。

製作の中心を担ったのは福谷修氏であり、彼は監督、脚本、原作、編集という主要なパートを一人で兼任しました。プロデューサーは柴田一成氏。映像面では、撮影を早坂伸氏が担当し、CG・VFXは坂本サク氏が手掛けています。また、音楽も坂本サク氏が担当し、作品の雰囲気を醸成しています。イメージフォトは渡辺茂史氏によるものです。

エンディングを飾るのは、千の小鳥による楽曲「辺境」です。この曲は、彼らのアルバム『少年有理』に収録されています。

『レイズライン』は、その衝撃的な題材、特異な撮影手法、そして特定の場所に宿る物語を掘り下げた内容により、インディーズ映画の世界で確かな存在感を示しました。中央線という日常的な空間に潜む非日常的な恐怖を描き出した本作は、観る者に都市生活の裏側に潜む不安や不条理を感じさせる作品と言えるでしょう。公式サイトなど、関連情報は福谷修氏のウェブサイトから確認できます。

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