レイモンド・ウィルソン

レイモンド・N・ウィルソン: 光学設計の巨人

レイモンド・N・ウィルソン（Raymond N. Wilson）は、1928年3月23日に生まれ、2018年3月16日に亡くなったイギリスの物理学者であり、望遠鏡の光学設計における権威です。バーミンガム大学で物理学を修了した後、インペリアル・カレッジ・ロンドンで工学の学位を取得し、1952年に兵役を終えた後は光学の分野でキャリアを開始しました。

ウィルソンは、1972年から1993年までの間、ヨーロッパ南天天文台（ESO）において約20年間にわたり多くの功績を残しました。彼は最初ジュネーヴで勤務し、その後ドイツのガーヒング・バイ・ミュンヘンで活動しました。それ以前には、ドイツのオーバーコッヘンにあるカール・ツァイス社で、望遠鏡の設計部門に11年間携わっていました。また、イギリス国内でもインペリアル・カレッジやイギリス国立物理学研究所での経験があります。

主に望遠鏡の光学技術に多大な貢献をしてきたウィルソンは、特に「能動光学」という概念の発展において重要な役割を果たしました。この能動光学技術は、現代の大規模望遠鏡の設計において基盤となる原則であり、ESOの新技術望遠鏡（New Technology Telescope）で初めて導入され、後に超大型望遠鏡（VLT）に引き継がれました。

1993年に引退するまでの間、ウィルソンはこの分野での架け橋となる重要な著作『Reflecting Telescope Optics』の2巻を著しました。この著作は、望遠鏡の設計において広く引用されることとなり、ウィルソンの名声を不動のものとしました。さらに、彼は次世代の望遠鏡設計においても革新をもたらし、3枚から5枚の鏡を使用する新たな設計を考案しました。

ウィルソンの業績は多くの評価を受けています。代表的な賞には、1993年に授与されたカール・シュヴァルツシルト・メダル、2010年に共同受賞したカヴリ賞、同じく2010年に受賞したTycho Brahe Prize等があります。また、フランスからは2003年にレジオンドヌール勲章シュヴァリエ章が授与され、2005年にはフランス科学アカデミーからラルマン賞（Prix Lallemand）も受けました。

ウィルソンはまた、歴史や経済学、宇宙論、生物学にも深い関心を寄せていました。そうした広範な知識は、彼の光学設計に対するアプローチにも影響を与えたことでしょう。また、89歳という長い生涯を全うし、2018年にロアバッハで亡くなりました。彼の業績と影響は、今もなお多くの人々に受け継がれています。

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