レウキッポス

レウキッポス：古代ギリシアの原子論哲学者

レウキッポスは、紀元前5世紀頃の古代ギリシアで活躍した自然哲学者です。生没年など詳しい人物像は不明な点が多いですが、原子論の創始者として、その名を知られています。彼の弟子として有名なのは、デモクリトスです。

謎に包まれた生涯

レウキッポスの生涯については、断片的な情報しか残されていません。ミレトスに生まれたと推測されていますが、確証はありません。エレアのパルメニデスに師事し、ゼノンの講義を受けたという説もあります。

彼の著作物は、弟子であるデモクリトスの著作と混同されている部分が多く、その真偽を巡って議論が続けられています。そのため、古代の哲学者エピクロスはレウキッポスの実在を疑ったほどです。しかし、アエティオスはレウキッポスの著作を引用するなど、実在を示唆する記述を残しています。

『大宇宙体系』や『知性について』といった著作がレウキッポスのものだと考えられていますが、これらもデモクリトスのものとの区別が難しいと言われています。

画期的な原子論

レウキッポスの最大の功績は、原子論を体系づけたことです。彼の哲学は、以下のようになります。

万物無限の変容: 世界は常に変化し、終わりがないことを主張しました。
[原子]]と空間: 世界は、物質の最小単位である「原子]」と、[[原子と原子の間の空虚な空間である「ケノン」から構成されると考えました。これは、現代科学における原子と真空の概念を先取りしたと言えるでしょう。
原子の運動と結合: アトムは常に運動しており、空間の中を動き回ります。そして、形状や大きさの似たアトム同士が結びつき、様々な物体を形成すると考えました。
世界の生成と消滅: 世界は、アトムとケノンの結合と分離によって生じ、消滅するとしました。これは、世界が永遠に変化し続けるという彼の考えを裏付けるものです。

レウキッポスの原子論は、物質の根源を原子という不変の粒子に求めた点で、それ以前の哲学とは一線を画していました。ヘーゲルは、レウキッポスが物体の一般的性質と感覚的性質を区別したことを高く評価しています。これは、物質の背後にある本質を追求する一歩と言えるでしょう。

レウキッポスの影響

レウキッポスの原子論は、デモクリトスによってさらに発展させられ、古代ギリシアだけでなく、後の科学思想にも大きな影響を与えました。特に、近世科学における原子論の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。彼の業績は、古代ギリシア哲学の重要な成果の一つであり、科学史においても重要な位置を占めています。謎の多い人物ではありますが、彼の功績は、現代の科学に繋がる重要な一歩であったことは間違いありません。

参考文献

Cyril Bailey『ギリシア原子論者とエピクロス　The Greek Atomists and Epicurus』1928年
Hermann Diels『ソクラテス以前哲学者断片集　Die Fragmente der Vorsokratiker』1937年
* ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシア哲学者列伝（下）』岩波文庫（岩波書店）1994年 ISBN 4003366336

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