レオカディア (ゴヤ)

『レオカディア』

『レオカディア』は、スペインのロマン主義作家フランシスコ・デ・ゴヤによって1820年から1823年に描かれた絵画です。この作品は、彼の邸宅であるキンタ・デル・ソルドの壁面に施された黒い絵の一部として知られています。ゴヤは当時深い精神的および肉体的苦痛を抱えており、この作品は彼の感情が色濃く反映されています。特に描かれているのは、彼の家政婦であり、おそらく愛人であったレオカディア・ソリーリャです。

作品の概要

『レオカディア』は、ゴヤの描く絵画の中でも特に葬送的な雰囲気を漂わせています。灰色の背景に黒いヴェールとマハドレスを纏ったレオカディアの表情は、悲しみやノスタルジーを感じさせます。彼女は広々とした青空を背にして立ち、岩に寄りかかる姿は、まるで墳墓を表現しているかのようです。一部の研究者は、彼女が葬送の対象となる存在を象徴しているのではないかと指摘しています。

X線検査によると、元々は暖炉として描かれた背景の塚には後からヴェールが追加され、作られた作品であることが分かっています。レオカディアは左腕の上に頭をのせ、視線は鑑賞者を見つめています。この姿は、思慮深く、観る者に対して愛情と憐れみを感じさせるものです。背景からは柔らかい黄土色の光が彼女を照らし出し、彼女の内面を映し出すかのようです。老年期のゴヤの作品群の一環として、この絵は特有の平穏感と和解の空気を持ち合わせています。

レオカディア・ソリーリャ

レオカディア・ソリーリャについては、彼女がゴヤの家政婦であり、約35歳年下の親戚であることが知られています。作品は多くが彼女の肖像であると認められ、時にプラトニックな愛情を持つ関係としても解釈されています。レオカディアの存在は、ゴヤの生活や芸術にも深く関わっており、彼の作品のモデルとしても重要視されています。彼女はゴヤの死後も彼の作品を所有し、当時のゴヤの風貌を感じさせる肖像画などが残されています。

ゴヤとレオカディアの関係

絵画の中で彼女は悲しみに満ちた視線で描かれ、愛人関係の推察を呼び起こしますが、一方で二人の間の愛情は感傷的であった可能性も指摘されています。ゴヤは彼女に対して特別な感情を抱いていたとされますが、遺言書には彼女についての記載がなかったため、二人の関係の実態は曖昧です。レオカディアは、当初はゴヤと共に暮らし、最期まで彼の思想や作品に寄り添った存在と言えるでしょう。

作品の来歴

ゴヤは1823年にフランスに亡命した後、この邸宅を譲渡しています。彼の死後、壁画はキャンバスに移され、最終的にマドリードのプラド美術館に所蔵されることとなります。作品の保存作業には困難が伴い、多くの絵具が失われましたが、最終的には美術館で展示されるようになりました。『レオカディア』は芸術愛好家にとって、ゴヤの芸術が持つ精神的な深みと、彼のパーソナルな部分を知る手がかりを提供しています。

このように『レオカディア』は、芸術作品であるだけでなく、ゴヤ自身の内面の葛藤や、彼とレオカディアの関係を物語る重要な作品として位置づけられています。

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