レオナルド・デ・ロレンツォ

生涯

イタリアが誇るフルート界の巨匠、レオナルド・デ・ロレンツォ（1875年8月29日 - 1962年7月29日）は、演奏家として、また教育者として、その名を歴史に刻んでいます。ポテンツァ県、ヴィッジャーノに生を受けた彼は、幼い頃からフルートに天賦の才を示し、わずか8歳で楽器を手にしました。その後、ナポリへと移り、権威あるナポリ音楽院で高度な音楽教育を受けました。

若きデ・ロレンツォの足跡は国際的でした。16歳でアメリカへ渡り、ケンタッキー州のホテルで働く経験も積みました。しかし、1896年には兵役の義務を果たすためイタリアへ帰国。アレッサンドリアに駐屯する軍楽隊に加わり、ジョヴァンニ・モランツォーニの指揮のもとで演奏活動を行いました。

軍務を終えたデ・ロレンツォは、演奏家としてのキャリアを本格的に始動させます。イタリア国内はもとより、ドイツ、そして遠く南アフリカへの演奏旅行を敢行しました。25歳を迎えた頃には、ケープタウンのオーケストラに入団し、異国の地で研鑽を積みました。1907年にはさらなる修行のためナポリへ一時的に戻りましたが、再び新大陸アメリカを目指します。そこで彼は、グスタフ・マーラーが常任指揮者を務めるニューヨーク・フィルハーモニック管弦楽団のフルート奏者という栄誉あるポストに就きました。また、ジョルジュ・バレールの代役としてニューヨーク交響楽団でも客演するなど、アメリカ音楽界の中心で活躍しました。

ニューヨークでの活動後も、デ・ロレンツォはミネアポリス、ロサンゼルス、ロチェスターといった各地の主要オーケストラで重要な役割を担いました。ミネアポリス交響楽団に在籍していた1914年、ピアニストのモード・ピーターソンと運命的な出会いを果たします。彼女は彼の伴奏者として頻繁に共演を重ね、やがて二人は結ばれました。妻モードは、彼の音楽活動を献身的に支える生涯の伴侶となりました。

演奏家としての名声に加え、教育者としての才能も高く評価されました。1923年から1935年まで、アメリカ屈指の音楽教育機関であるイーストマン音楽学校でフルートの教授を務め、多くの後進を指導しました。彼の教えは、次世代のフルート奏者たちに多大な影響を与えました。

教職を退いた後も、デ・ロレンツォの音楽への情熱は衰えませんでした。作曲活動に専念し、フルートのための数々の独奏曲や室内楽曲を生み出しました。彼の作品の中には、「Saltarello」や「Pizzica-pizzica」のように、故郷ヴィッジャーノに伝わる活気あふれる民俗音楽に敬意を表したものが含まれています。これらの作品は、彼のルーツへの深い愛情を物語っています。

また、彼は長年にわたりフルートとその演奏法に関する研究を深め、その成果を詳細な理論書としてまとめました。これらの貴重な資料は、1953年10月25日に南カリフォルニア大学へと寄贈され、フルート研究における重要な財産となっています。同年、デ・ロレンツォはイタリアのローマにあるワシントン国際アカデミーから名誉博士号を授与されるという栄誉に浴し、さらにミラノに新設されたフルートクラブの名付け親となるなど、故国でもその功績が称えられました。1917年にはロサンゼルス・フルート・クラブから初の名誉会員に迎えられ、この団体は1955年8月29日には彼の80歳の誕生日を記念する演奏会を催し、彼の作品を演奏しました。

レオナルド・デ・ロレンツォは1962年7月29日、カリフォルニア州サンタバーバラの自宅で静かに息を引き取りました。しかし、彼の音楽への貢献と情熱は忘れられることはありません。彼の故郷ヴィッジャーノでは、二年に一度、彼に捧げられた「レオナルド・デ・ロレンツォ」国際フルート大会が開催されており、世界中から若きフルート奏者たちが集い、その偉大な遺産を称えています。

主要作品と著作

デ・ロレンツォは多作であり、教育者としても重要な著作を残しています。

主要作品（一部）

フルートのための「アッパッショナート」 Op.5
フルートとピアノのための「Giovialita」 Op.15
フルートのための「Saltarello」 Op. 27
フルートのための「Carnevale di Venezia」
Nove grandi studi
3つのフルートのための「I tre virtuosi」 Op. 31
4つのフルートのための「I seguaci di Pan」 Op. 32
フルートのための「Non plus ultra」 Op. 34
フルートのための「Pizzica-Pizzica」 Op. 37
フルートのための「Suite mitologica」 Op. 38
フルートとピアノのための「Idillio」 Op. 67
5つのフルートのための「シンフォニエッタ Sinfonietta (Divertimento Flautistico)」 Op. 75
フルート、クラリネットとファゴットのための「Trio Eccentrico」 Op. 76

教育書

L'Indispensabile A complete modern school for the flute (1912)
* My complete story of the flute (1951)

彼の作品は今日でもフルート奏者にとって重要なレパートリーの一部であり、教育書はフルート学習の標準として広く活用されています。

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