レオ8世 (ローマ教皇)

レオ8世は、10世紀にローマ教皇を務めた人物です。彼の教皇在位は、963年から965年までの短い期間でしたが、その間に激しい政治的変動と教会の混乱を経験しました。出自はローマの名門貴族であり、教皇に就任する前は書記学校の監督者、すなわちプロトセリヌスという役職にありました。

963年、神聖ローマ皇帝オットー1世がローマで教会会議を招集し、その結果、当時の教皇ヨハネス12世が廃位され、レオ8世が後任の教皇に選出されました。しかし、この教皇就任には大きな問題がありました。レオ8世は俗人であったため、教皇になるための叙階の儀式を、わずか2日間で急いで行ったのです。この強引な手法は、ローマ市民をはじめとする多くの人々の反感を買い、不満の種となりました。

964年2月、オットー1世がローマを離れると、レオ8世は身の危険を感じてローマから逃亡しました。そして、以前廃位されたヨハネス12世がローマに復帰します。しかし、そのヨハネス12世も間もなく急死し、ローマ市民は新たにベネディクトゥス5世を教皇に選びました。

しかし、オットー1世は再びローマに戻り、街を包囲しました。その結果、ベネディクトゥス5世は助祭に降格させられ、レオ8世が再び教皇として復位することになりました。この際、レオ8世はベネディクトゥス5世からパリウム（教皇の象徴）を自ら剥ぎ取ったとされています。この復位以降、レオ8世に対する抵抗はなくなったとされており、そのため、この時点から彼の死没である965年3月頃までが、レオ8世が真の教皇であった期間とみなされています。

レオ8世の復位を決めた教会会議において、レオ8世がオットー1世とその後の後継者に対して、イタリア統治者としての叙任権を与えたという説がありますが、現在では、その根拠となる文書の正当性について疑問が呈されています。この点については、歴史家の間でも見解が分かれています。

また、レオ8世の死因については、一説には腹上死であったとも伝えられています。この事実は、彼の生涯が波乱に満ち、突然の死を迎えたことを物語っています。レオ8世の教皇在位は、政治的な駆け引きと教会の混乱が交錯する時代を象徴しており、彼の生涯は中世ヨーロッパの権力闘争の一端を示すものと言えるでしょう。彼は、その短い在位期間にもかかわらず、後世に大きな影響を残した人物の一人です。

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