レクイエム (ヴェルディ)

ジュゼッペ・ヴェルディのレクイエム

ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した「レクイエム（原題：Messa da Requiem per l'anniversario della morte di Manzoni）」は、イタリアの著名な文豪アレッサンドロ・マンゾーニの死を悼むために作られた宗教音楽の一つです。この作品は1874年5月22日にミラノのサン・マルコ教会で初演され、以来、モーツァルトやフォーレの作品と共に「三大レクイエム」の一つとして名を馳せています。特にその壮麗さから「最も華麗なレクイエム」と評されることもあります。

作曲の背景

ヴェルディが宗教音楽を手がけるのはこのレクイエムが初めてではありません。1830年代の初め、故郷の教会で数曲を作曲していましたが、これらはほとんど残っていません。また、1868年に亡くなった大作曲家ロッシーニを追悼する「ロッシーニのためのレクイエム」を他の作曲家たちと共同で作曲する計画も立てましたが、結局このプロジェクトは頓挫しました。

マンゾーニへの敬愛

文豪マンゾーニは、ヴェルディにとって特別な存在でした。彼は若い頃からマンゾーニを深く敬愛し、彼の詩に対してもいくつかの曲を付けたことがあります。マンゾーニの死はヴェルディにとって大きな打撃であり、彼は葬儀には参加しませんでしたが、個人的に墓を訪れて追悼を行いました。この経験が、彼の新たなレクイエムの創作動機となりました。

楽器編成

「レクイエム」は、独唱者がソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バスで構成され、混声四部の合唱団とともに演奏されます。また、木管、金管、弦楽器、打楽器が揃い、特にトランペットのバンダが特徴的です。全体の演奏時間は約85分で、全7曲から成り立っています。

楽曲の構成

このレクイエムは、以下のように構成されています：
1. Requiem et Kyrie - 合唱による
2. Kyrie eleison - テノールの独唱から始まる
3. Dies Iræ - 最も有名な旋律が展開され、合唱が中心
4. Tuba mirum - バスと合唱が盛大なファンファーレで登場
5. Mors stupebit - バスの独唱
6. Lacrymosa - 感動的な合唱
7. Libera Me - ソプラノ独唱から始まる

初演とその後

1874年の初演はサン・マルコ教会で行われ、ヴェルディ自身が指揮を担当しました。楽団はスカラ座のオーケストラであり、合唱団は120名が参加しました。このレクイエムは宗教音楽としては極めて早く、海外でも再演されることになりました。特にアメリカでは1874年11月に初演され、大きな反響を呼びました。

評価と批判

レクイエムは、その表現が「イタリア・オペラ的」だと評価され、教会の音楽として適さないとされる批判もありました。これに対し、ヨハネス・ブラームスはその芸術的価値を認め、レクイエムを絶賛しました。また、ヴェルディの妻ジュゼッピーナは、夫の音楽が他の作曲家の影響を受けるべきではないとし、その独自性を強調しました。音楽学者たちもこの作品が持つ普遍的なテーマを称賛しています。

ヴェルディのレクイエムは、その華麗さと感情の深さから、現代でも多くの人々に愛され続けています。

もう一度検索