アレッサンドロ・マンゾーニ

アレッサンドロ・マンゾーニ

アレッサンドロ・フランチェスコ・トンマーゾ・アントニオ・マンゾーニ（1785年3月7日 - 1873年5月22日）は、イタリアにおける重要な詩人や作家として、彼の作品や影響は今日まで続いています。特に、彼の肖像がかつて10万イタリア・リレの紙幣に採用されたことが彼の名声を証明しています。

生涯の概要

マンゾーニはミラノの伯爵家に生まれ、父はピエトロ・マンゾーニ、母は啓蒙思想家チェーザレ・ベッカリーアの娘であるジュリアでした。1782年に結婚した両親は、1792年に法定別居という形で関係を解消しました。若い頃の彼は1805年、母と共にパリに赴き、ヴォルテールやクロード・フォリエルといった著名な文学者の影響を受けながら啓蒙思想を学びました。

1808年には銀行家の娘エンリケッタ・ブロンデルと結婚し、カトリックに改宗しました。マンゾーニはそれ以前はジャンセニスムを信じており、エンリケッタはカルヴァン派でしたが、この回心が彼の今後の思想や行動に大きな影響を与えました。1814年からミラノに住み、1833年にはエンリケッタを失ったものの、1837年に再婚しその後は著作活動に専念しました。

特に1848年のミラノでの対オーストリア蜂起では、息子を戦場に送り出し、イタリアの君主たちに救援を呼びかけるなど、愛国者としての姿勢を示しました。1860年にはイタリア王国が成立し、上院議員に任命されましたが、晩年は多くの家族を失い、ついには自身も1873年に事故によって亡くなりました。彼の追悼のために、ジュゼッペ・ヴェルディの『レクイエム』が作曲されたことでも知られています。

文学作品とその影響

マンゾーニは、最初は古典的な詩を手がけていましたが、やがてロマン主義に移行しキリスト教徒としての深い感情を表した作品を多く残しました。特に『聖なる讃歌』や『La resurrezione』、さらにはナポレオンを悼んだ『五月五日』など、感情豊かな詩が多く、その中で彼自身の信仰や思想が色濃く表れています。

特に彼の代表作である歴史小説『いいなづけ』（1825-1826）は、イタリア文学の中でも特筆すべき作品で、トスカーナ語を基にした近代標準語の発展にも寄与しました。同書では、社会的なテーマや人間関係を精緻に描写し、イタリア文学における重要な位置を占めています。マンゾーニはまた『ロマン主義について』を執筆し、新しい文学流派の考えを広めたことでも知られています。彼の主張は、神話や古典への盲従を排し、真実性と面白さを重視する新たなアプローチを提案するものでした。

日本における評価

マンゾーニの作品は日本でも広く翻訳されています。特にフェデリコ・バルバロと尾方寿恵による『婚約者』や平川祐弘の訳による『いいなづけ』は多くの読者に親しまれています。彼の影響は、文学にとどまらず、思想や文化にも広がり、現在のイタリア文学と社会において重要な人物となっています。

マンゾーニは、文学だけでなく、イタリアの歴史や文化を深く理解させてくれる貴重な作家であり、彼の功績と作品は今なお色あせることなく私たちに語りかけています。

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