レクイエム・フォー・ドリーム

『レクイエム・フォー・ドリーム』（2000年）は、麻薬の恐ろしさを描いた衝撃的なアメリカ映画です。ヒューバート・セルビー・ジュニアの小説『夢へのレクイエム』を原作とし、同氏が脚本も担当しました。

舞台はニューヨーク・ブルックリンのコニーアイランド。シングルマザーのサラはテレビ漬けの孤独な日々を送っています。息子ハリーは高校卒業後も定職に就かず、恋人マリオン、親友タイロンと共にヘロインに手を染めます。サラはダイエット薬の服用を始めますが、それは覚醒剤でした。

ハリーとタイロンはヘロインの密売で一時的に成功を収め、それぞれの夢を描きます。ハリーはデザイナー志望のマリオンと共にブティックを開くことを夢見ており、タイロンはゲットーから抜け出し、家庭を築くことを夢見ていました。しかし、彼らの夢は麻薬依存によって徐々に崩れていきます。

サラはダイエット薬の過剰摂取により精神を蝕まれ、精神病院へと送られます。ハリーとタイロンの密売は、マフィアの抗争に巻き込まれ、失敗に終わります。ハリーはヘロインの常用により細菌感染を起こし、左腕を切断することになります。タイロンは逮捕され、過酷な刑務所生活を送ることになります。マリオンは生活のために売春を始め、最終的には地下クラブで屈辱的な扱いを受ける身となります。

物語の終盤では、サラはテレビ出演の夢を繰り返し語り、ハリーは片腕を失い、マリオンはヘロインにすがって生活し、タイロンは刑務所の過酷な現実の中で苦しんでいます。それぞれの夢は完全に砕け散り、麻薬の恐ろしい現実を突きつけられます。

本作は、エレン・バースティン（サラ役）の演技が特に高く評価され、インディペンデント・スピリット賞主演女優賞を受賞、アカデミー主演女優賞にもノミネートされました。ジェニファー・コネリー（マリオン役）もインディペンデント・スピリット賞助演女優賞にノミネートされています。

映画の音楽はクリント・マンセルが担当し、クロノス・クァルテットが演奏しました。ミニマルでヒップホップの要素を取り入れたサウンドは、物語の展開に合わせて音量が変化し、観客に圧倒的な緊張感を与えます。『Lux Aeterna』は特に有名で、多くの映画やテレビ番組の予告編で使用されています。

『レクイエム・フォー・ドリーム』はRotten Tomatoesで79%の高評価を得ており、Metacriticでも68/100と高い評価を得ています。イギリスの映画雑誌『エンパイア』の「落ち込む映画」ランキングやアメリカのWebサイト『Taste of Cinema』の「心がつぶれそうになる傑作映画」ランキングで1位を獲得するなど、多くの「鬱映画」ランキングで上位にランクインしています。

興味深いのは、本作が日本のアニメ監督、今敏の『パーフェクトブルー』から影響を受けているという点です。マリオンが浴槽に顔を沈めて叫ぶシーンは、『パーフェクトブルー』の主人公のシーンと類似しており、監督のダーレン・アロノフスキーは来日時に今敏と対談しているとのことです。

『レクイエム・フォー・ドリーム』は、麻薬の危険性と、それが引き起こす悲惨な結果をリアルに描き出した、忘れがたい傑作です。一度観たら忘れられない、衝撃的な作品と言えるでしょう。

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