レジェンド

「レジェンド」（legend）という言葉は、フランス語の「レジャンド」（légende）が英語に取り入れられた借用語です。その原義は文字通り「伝説」を意味します。

意味の広がり

原義である「伝説」から派生して、「レジェンド」はいくつかの異なる意味を持つようになりました。古くは、特定の人物、特に聖人に関する伝記や物語を指す言葉として用いられました。有名な例としては、聖人伝を集めた「レゲンダ・アウレア」（黄金伝説）などがあります。

また、書籍や地図、図表などで使用される記号や凡例の一覧を示す部分も「レジェンド」と呼ばれます。これは、もともと「読まれるべきもの」という意味合いから派生した用法とされています。

さらに、現代では、単に過去の伝説上の人物だけでなく、生存しているかどうかにかかわらず、歴史に名を刻むような偉業を成し遂げた人物や、特定の分野で顕著な功績を残した人物を指して「レジェンド」と称することがあります。

人物に対する用法

特に近年の日本において、「レジェンド」は長年にわたり第一線で活躍を続け、高齢になってもなお現役であるか、あるいは長期間活躍したプロフェッショナル、特にスポーツ選手に対して敬意を込めて用いられることが増えました。この用法は、スキージャンプ選手の葛西紀明氏が「レジェンド葛西」と呼ばれるようになったことが広がるきっかけの一つとされています。

この流れを受けて、野球の山本昌氏、イチロー氏、サッカーの三浦知良氏、テニスの伊達公子氏、ゴルフの青木功氏など、多くのベテランプロスポーツ選手が「レジェンド」と称されるようになりました。この用法は社会的に浸透し、2014年には「レジェンド」が新語・流行語大賞のトップテンに選ばれ、葛西氏、青木氏、山本昌氏の3名が受賞者となりました。

また、プロレス界では、かつて一時代を築いた選手を指す敬称として用いられたり、特定のプロレスラーユニット名として使用された例もあります。この他にも、ミュージシャンや実演販売師、音楽グループ名など、様々な分野で人やグループの名称として「レジェンド」という言葉が使われています。

作品名や商標としての使用

「レジェンド」は、その響きやイメージから、非常に多くの固有名詞に使用されています。例えば、著名なアーティストのベストアルバムや、映画のタイトル、特定のCMシリーズの名称として広く知られています。

製品名や商標としても多様に使われており、自動車メーカーの高級乗用車、ギターブランド、トレーディングカードゲームの拡張セット名、焼酎のブランド名などがあります。また、プロレスや総合格闘技の興行名、社会人野球チーム名、かつてのパーソナルコンピュータブランド名としても使用されていました。

フィクションにおける登場

フィクションの世界でも、「レジェンド」という名称は頻繁に登場します。特撮作品における巨大ヒーローや仮面ライダー、アニメに登場するモビルスーツやスーパーヒーロー、対戦格闘ゲームのキャラクター名など、様々な作品でキャラクターやメカニックの固有名詞として使われています。

また、特定の作品群全体を指す用語としても使われることがあります。例えば、漫画作品における旧世代の主力キャラクターの総称や、特定のメディアミックス作品シリーズ名として知られています。さらに、ある人気SFシリーズにおいては、公式に定められた正史（カノン）に含まれない過去の作品群を「レジェンズ」と分類するために用いられています。

まとめ

このように、「レジェンド」という言葉は、原義である「伝説」から始まり、聖人伝や凡例といった意味を経て、現代では特定の分野で偉業を成し遂げた人物や、長年活躍を続けるベテランを称える言葉として定着しました。同時に、映画や音楽作品、商品名、フィクション世界の名称など、非常に幅広い分野で固有名詞として使用されており、多様な意味と用途を持つ言葉として私たちの身近に存在しています。

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