レジンキャスト

レジンキャスト：少量生産に最適な樹脂成型法

レジンキャストとは、主に工業デザインの試作品製作や歯科技工、そして模型製作など、少量生産に適した合成樹脂の成型方法です。レジンキャスティングと呼ばれることもあります。常温で液体状の樹脂を型に流し込み、硬化させる常温鋳造法の一種であり、射出成型とは異なる特徴を持っています。

レジンキャストの概要

「レジン」は元々は天然樹脂を指していましたが、現在では合成樹脂も含めた総称として広く用いられています。レジンを専門に扱う企業も数多く存在します。

合成樹脂の成型方法として一般的なのは、熱可塑性樹脂を高温高圧で金型に流し込み、冷却・硬化させる射出成型です。この方法は大量生産に向いていますが、金型作成費用が高く、特殊な設備も必要となるため、少量生産には適しません。

一方、レジンキャストは、常温で液体状の熱硬化性樹脂を使用します。硬化剤を混ぜ合わせることで重合し固体となるため、シリコーンゴムやプラスチック、蝋などの型に常温常圧、あるいは低温低圧で流し込むことができます。この製法は歯科技工の分野で古くから用いられており、近年はラピッドプロトタイピングによる試作品製作や、模型製作などにも広く活用されています。

日本の模型愛好家の間では、一般的な合成樹脂成型法という意味ではなく、ガレージキット製作などで用いられる二液混合重合型の熱硬化性樹脂を指す場合もあります。近年では、3DCADと3Dプリンタを組み合わせた原型製作も盛んに行われています。

レジンキャストの利点と欠点

レジンキャストは、個々の製品単位で見ると射出成型に比べてコスト高となりますが、初期投資額を抑えられるため少量生産や一品生産に最適です。特に、歯科技工などの分野では、その特性が有効に活用されています。しかし、大量生産には全く向いていません。

その理由は、射出成型が自動化されているのに対し、レジンキャストは手作業による注型作業が必要で、ある程度の技術を要すること、型が樹脂に侵されるため寿命が短いこと、硬化に時間がかかるため生産性が低いことなどが挙げられます。また、射出成型のような高圧成型ではないため、細部の再現性も劣ります。ただし、軟質の型を使用するため、抜き勾配を考慮する必要がなく、複雑な形状の製品も分割せずに製作できるという利点もあります。

また、有機溶剤が内部に残留していると、経年変化により変形する可能性がありますが、加熱処理することで軽減できます。

レジンキャストで使用される材料

使用する型

型材としては、主にシリコーンゴムが用いられます。軟質であるため抜き勾配が不要で、複雑な形状の製品も製作可能です。耐久性は金型に劣りますが、シリコーンゴムの普及により、原型製作の自由度が高まり、個人製作によるガレージキットの普及にも繋がりました。シリコーンゴム普及以前は、天然ゴムを加熱重合したゴム型が使用されており、原型には耐熱性の素材が必要でした。

注型する樹脂

レジンキャストには、二液混合型のウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが使用されます。いずれも粘性が高く流動性が低いものが多いため、流動性を高めるために揮発性溶剤を混合した製品もあります。

ウレタン樹脂: 常温で液状の主剤と硬化剤を混合して重合させます。硬化時間は数分から10分程度で、硬化前は透明ですが、硬化後は不透明になります。粘性が高いため、模型用製品には揮発性溶剤が添加されている場合が多く、これにより流動性が向上しますが、溶剤の揮発による歪みも発生する可能性があります。真空注型には使用できません。ノンキシレンタイプが主流です。

エポキシ樹脂: ウレタン樹脂と同様に二液混合型で、硬化時間は10分から数時間です。硬化前は透明、硬化後も透明性を保ちますが、やや暖色系の色合いになります。粘性が高く、そのままでは常温常圧での注型は困難です。硬化後の安定性は高いです。模型用では揮発性溶剤を含まないものが多く、アクセサリー製作用などには低粘度・注型用の製品も市販されています。

不飽和ポリエステル樹脂: 透明度が高いのが特徴ですが、重合硬化時の縮みが大きいため、寸法安定性に課題があります。揮発性溶剤が含まれている場合が多く、硬化後も変形する可能性があります。

レジンキャストの成型方法

レジンキャストの成型方法には、重力注型法、真空注型法、遠心法などがあります。

重力注型法: 樹脂自身の重みで型に流し込む方法です。特別な設備は不要ですが、流動性の低い樹脂では型全体に行き渡らず、気泡が残る可能性があります。トップゲート方式とアンダーゲート方式があります。トップゲート方式は樹脂を上から流し込むため、気泡が発生しやすい一方、型が小型化できます。アンダーゲート方式は下から流し込むため、気泡は湯口に集中し、仕上がりが向上しますが、型が大型化します。

真空注型法: 精密な成型品を得るために用いられます。型と樹脂を真空槽内で減圧し、その後大気圧に戻すことで、気泡を取り除き、樹脂を押し込みます。流動性の低い樹脂にも対応でき、高精度の成型品が得られますが、真空ポンプなどの設備が必要です。

遠心法: 円盤状の型を回転させ、遠心力によって樹脂を型全体に行き渡らせる方法です。成型物が回転軸に対して対称である必要があります。

関連項目

金型、射出成型、簡易インジェクション、ダイカスト、金属粉末射出成型法、鋳造、繊維強化プラスチック、入れ歯

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