レス・ザン・ゼロ

『レス・ザン・ゼロ』：退廃と喪失の青春

ブレット・イーストン・エリスが1985年に発表した『レス・ザン・ゼロ』（Less Than Zero）は、ロサンゼルスを舞台に、富裕層の若者たちの退廃的な日常を描いた作品です。当時20代前半だったエリスの瑞々しい感性と、タブーに踏み込む描写が、社会に大きな衝撃を与えました。

あらすじ

物語は、アメリカ東部の大学に通う主人公クレイが、冬休みに故郷ロサンゼルスへ帰省することから始まります。クレイは、かつての恋人ブレアや幼馴染のジュリアンらと再会しますが、彼らはドラッグやセックスに溺れ、刹那的な生活を送っていました。クレイは、そんな彼らの姿に戸惑いながらも、次第に退廃的な世界へと引き込まれていきます。

登場人物

クレイ: 物語の主人公。東部の大学に通う青年。帰省を機に、故郷の変貌を目の当たりにする。
ブレア: クレイの元恋人。南カリフォルニア大学に通いながら、ドラッグに溺れる。
ジュリアン: クレイの幼馴染。ヘロイン中毒に苦しみ、男娼として生きる。
トレント: クレイの友人。モデルとして活躍する傍ら、享楽的な生活を送る。
リップ: クレイのドラッグディーラー。
ダニエル: クレイの同級生で脚本家志望。
キム: ブレアの友人。
フィン: ジュリアンのポン引き。
アラナ: ブレアの友人。中絶後、クレイのもとを訪れる。
ミュリエル: 拒食症に苦しむ少女。

映画版

1987年には映画化もされましたが、ストーリーは原作から大きく変更されています。映画版では、ジュリアンがドラッグのオーバードーズで死亡するという結末を迎えます（原作では死亡しません）。

映画版あらすじ

東部の大学に通うクレイは、クリスマス休暇でロサンゼルスに帰省。恋人のブレアや親友のジュリアンと再会するが、2人はコカインに溺れていた。特にジュリアンは深刻で、中毒のため家族から勘当され、麻薬の売人リップに借金を抱え、男娼を強いられていた。ブレアは献身的にジュリアンを介抱し、クレイも協力して彼を救おうとするが、ジュリアンはオーバードーズで命を落とす。休暇後、クレイはブレアと共に東部へ戻る。

キャスト

アンドリュー・マッカーシー
ジェイミー・ガーツ
ロバート・ダウニー・Jr.

また、無名時代のブラッド・ピットが、パーティーの客としてカメオ出演しています（クレジットなし）。

スタッフ

監督: マレク・カニエフスカ
脚本: ハーリー・ペイトン
音楽: トーマス・ニューマン

続編『帝国のベッドルーム』

2010年には、続編となる『帝国のベッドルーム（Imperial Bedrooms）』が出版されました。本作では、40代になったクレイが脚本家として登場し、前作の登場人物たちも再登場します。エリスは当初、『帝国のベッドルーム』を映画『レス・ザン・ゼロ』と同じキャストで映画化したいと語っていましたが、後に撤回しています。

『レス・ザン・ゼロ』は、若者の疎外感や虚無感を鋭く描き出し、現代社会におけるアイデンティティの危機を象徴する作品として、今もなお読み継がれています。

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