男娼

男娼：歴史、文化、そして現代

男娼とは、性的サービスを提供し金銭を得る男性のことです。女性の場合は娼婦と呼ばれますが、男娼は歴史を通して様々な社会背景や文化の中で存在してきました。本稿では、男娼の歴史、世界各国の事例、そして現代における状況について詳細に解説します。

日本における男娼の歴史

日本では古くから、芸人が売春行為に関わっていた記録があり、男娼もその例外ではありませんでした。寺院の稚児や武士の間の男色関係も、売春ではないものの、その周辺には性的サービスを提供する者たちが存在しました。中世には、少年を客に売る親方が利益を得る商売も存在していたとされます。

江戸時代には、歌舞伎役者の売春行為が問題となり、禁止令が出されました。しかし、若衆歌舞伎や野郎歌舞伎でも同様の問題が発生し、結果として歌舞伎芸人全体が客の男色の要求に応じる傾向がありました。吉原遊郭のような多様な形態の遊女が存在したように、男娼の世界も、高級な色子から地方巡業の芸人まで、多様な形態で存在していました。多くの男娼は12歳で客を取り始め、19歳頃まで活動していましたが、中には20代後半まで活動する者もいました。

好まれたのは、小柄で華奢な少年で、幼少期から男娼として育てられるケースもありました。多くは上方出身の少年で、言葉遣いや所作を磨き、清潔さを重視していました。主に男性を相手にしていましたが、成人すると女性を相手にする場合もありました。

太平洋戦争前には上野に男娼が集まっていたことが知られ、戦後には小説「男娼の森」などが男娼という言葉を広く知らしめました。戦後間もなくも上野には多くの男娼がおり、1948年には警視総監が男娼に殴られる事件も発生しました。大阪では天王寺公園周辺が「男娼の森」と呼ばれていました。

現代では、街角に立って客を待つような男娼は減少し、「男娼」という言葉の認知度も低下しています。しかし、ゲイ向け風俗店などで働く者は、広義には男娼に含まれるでしょう。1950年代以降、ゲイバーなどで「ボーイ」と呼ばれる男性が客にサービスを提供する形態が一般的になり、新聞広告にも掲載されるようになりました。これらの店は、ニューハーフ風俗とは明確に差別化され、男性としての容姿を保ち、男らしさを売りにしています。現在では「ボーイ」という呼称が一般的になり、「男娼」という言葉はあまり使われていません。従事者にはゲイ、バイセクシュアル、ストレートも含まれ、多くの店ではセーフセックスに配慮しています。

世界各国の男娼

アラブ・ペルシアでは、宗教的に禁止されていた飲酒や同性愛行為が実際には行われており、美少年を置いた酒店も存在しました。カリフやスルタンの中には美青年を寵愛する者もおり、彼らは大きな権力を持つこともありました。

インドでは、『カーマ・スートラ』に男性同士の性愛が記述されているように、同性愛は珍しいことではなく、奴隷身分の者が男娼として働かされることもありました。

古代ギリシア・ローマでは、公然と男娼が売買され、神殿売春と関連する神殿男娼も存在しました。古代ローマでは、多様なセクシュアリティに対応するため、様々な年齢の男娼が娼館にいました。

西ヨーロッパでは、中世には男娼館はあまり公然とはしていませんでしたが、ルネサンス以降、イタリアの自由都市では豪華な男娼館が存在し、多くの男娼が外国人客を迎えていました。近代以降は、大都市で同性愛者の需要に応える男娼ネットワークが形成され、警察との間で暗黙の了解が成立していました。

男娼が登場する作品

男娼をテーマにした作品は数多く存在します。小説、映画、ドラマなど、様々な作品で描かれ、それぞれの視点から男娼の生き様や社会との関わりが表現されています。例として『男娼の森』『娼年』『マイ・プライベート・アイダホ』などが挙げられます。

まとめ

男娼の歴史は長く、社会構造や文化、宗教など様々な要因と複雑に絡み合っています。現代においても、その存在形態は変化しつつも、社会の一部分として存在し続けています。今後、LGBTQ+の権利意識の高まりなど、社会状況の変化に伴い、男娼を取り巻く状況も変化していくことが予想されます。

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