レッドブル・RB7

レッドブルRB7：2011年F1シーズンを席巻したマシン

2011年のF1世界選手権は、レギュレーションの大幅変更によって、チームの技術開発競争が激化しました。この激動のシーズンで、レッドブル・レーシングが開発したRB7は、その卓越したパフォーマンスで、圧倒的な強さを誇示しました。

レギュレーション変更への対応

2011年シーズンのレギュレーション変更は多岐に渡りました。まず、2009年から多くのチームが採用していたマルチディフューザーが禁止され、ダウンフォースの低下が避けられなくなりました。また、空力特性を変化させるデバイスとして利用されていたFダクトも禁止されました。

一方、2010年シーズンはFOTAによる自主規制で制限されていたKERS（運動エネルギー回生システム）が復活し、新たにDRS（ドラッグリダクションシステム）が導入されました。これらの変更に対応するため、RB7は徹底的な設計見直しが行われました。

RB6から受け継いだプルロッド式リヤサスペンションは、構成部品の見直しによって、さらなるパフォーマンス向上に貢献しました。そして、RB6で大きな成功を収めたブロウンディフューザーは、排気管の配置変更とオフスロットル・ブローイング技術の導入によって、より効率的にダウンフォースを生成できるようになりました。オフスロットル・ブローイングはイギリスGPで一時禁止されましたが、すぐに撤廃されました。

特徴的なVノーズは、モノコック高の制限に対応するため、RB6に比べて左右の突起の高さが抑えられています。また、シャークフィンはリアウイングとの接続が禁止されたため、当初は小型化されましたが、後に撤去されました。

RB7は、フロントウィングと路面の距離を近づけるためにリアの車高を高く設定することで、前下がりの傾斜（レーキ）を実現しました。このレーキとブロウンディフューザーは、RB7の圧倒的な速さの秘訣の一つと考えられています。

搭載エンジンはルノー製で変更はありませんでしたが、一時的に日産の高級車ブランドであるインフィニティとの名称変更の噂もありました。しかし、最終的にはスポンサー契約のみであることが発表されました。KERSはルノーとレッドブルが共同開発したマニエッティ・マレリ製システムで、バッテリーはギアボックスの左側面という、熱や振動の問題を抱える位置に搭載されました。

圧倒的なシーズンパフォーマンス

2月1日、バレンシア・サーキットで発表されたRB7は、セバスチャン・ベッテルによってシェイクダウンされました。開幕戦オーストラリアGPでは、KERSを搭載しないという戦略を選択。しかし、そのパフォーマンスは他チームを圧倒し、ベッテルは見事ポール・トゥ・ウィンを達成しました。

RB7は特に予選で圧倒的な強さを見せつけ、ベッテルはシーズン最多記録となる15回のポールポジションを獲得しました。韓国GPを除くすべてのレースでポールポジションを獲得するなど、その速さは群を抜いていました。ベッテルは、ポールポジションからスタートし、DRSが有効となる3周目までにリードを広げるという、独自の勝ちパターンを確立しました。

チームはオフスロットル・ブローイング技術で他チームをリードしており、その規制がシーズン中に決まると、予選でのアドバンテージが失われると噂されました。チームコンサルタントのヘルムート・マルコは、FIAの判断に不満を示し、ライバルチーム、特にフェラーリの優遇を指摘しました。

レッドブルは得意とするハイダウンフォースコースだけでなく、エンジンパワーで劣る高速コースでも勝利を収めました。イタリアGPでは、予選・決勝ともトップスピードは最下位だったにもかかわらず、ショートギアのセッティングで優勝という、ギャンブル的な戦略が成功しました。一方、ベルギーGPではサスペンション設定に問題があり、タイヤに深刻なブリスターが発生するというトラブルに見舞われました。

後半戦はマクラーレンやフェラーリとの差が縮まりましたが、日本GPでベッテルのドライバーズチャンピオンが決定。コンストラクターズチャンピオンも獲得し、2年連続のダブルタイトルを獲得しました。最終的には19戦中18回ポールポジションを獲得し、12勝という圧倒的なシーズンとなりました。

スペック

RB7のスペックは下記の通りです。

シャーシ: カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造モノコック
エンジン: ルノーRS27-2011 (V型8気筒、2400cc)
サスペンション: フロント：プッシュロッド、リア：プルロッド
タイヤ: ピレリ
* ギアボックス: 縦置き7速＋リバース1速油圧式セミオートマチック

RB7は、2011年シーズンのF1を席巻した、まさに伝説的なマシンと言えるでしょう。その圧倒的な速さと、レギュレーション変更への柔軟な対応は、F1の歴史に大きな足跡を残しました。

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