レッド・スコルピオン

レッド・スコルピオン：冷戦下のアフリカを舞台にしたアクション劇

1989年製作のアメリカ映画『レッド・スコルピオン』は、冷戦時代の緊張感とアフリカの政治的混乱を背景にしたアクション映画です。主人公はソ連の精鋭特殊部隊員ニコライ。彼は上官の命令で、アフリカの反共産政府勢力の指導者スンダタの暗殺任務を命じられます。

ニコライはキューバ軍の軍事顧問として現地に潜入。スンダタの居場所を探るため、危険な行動に出ます。基地内で騒ぎを起こし投獄され、そこで反政府ゲリラのカルンダやアメリカ人ジャーナリストのデューイと出会い、共に脱走します。

脱走劇を経て、ニコライはカルンダの村にたどり着きますが、そこはソ連とキューバ軍の襲撃により壊滅していました。この惨状を目の当たりにしたニコライは、これまで信じてきたソ連への疑念を抱き始めます。

その後、スンダタらと合流したニコライは、葛藤の末、暗殺任務を遂行しようとします。しかし、彼の企みはスンダタに見透かされ、失敗。砂漠に置き去りにされ、キューバ軍に捕らえられます。上官であるヴォルテーク将軍はニコライを処刑しようとしますが、彼は脱走に成功します。

砂漠を彷徨うニコライを助けたのは、サン人の男でした。彼はスンダタの元にたどり着きますが、その頃、ヴォルテーク率いる部隊がスンダタの村を襲撃しており、スンダタは重傷を負っていました。

死を目前にしたスンダタから仲間として認められたニコライは、単身で駐留軍基地を襲撃します。デューイやカルンダも彼に加勢し、激戦の末、ニコライはザイアス大佐らを倒し、ヴォルテークのヘリコプターも撃墜します。

この映画は、冷戦時代のイデオロギー対立と、アフリカにおける代理戦争の悲劇を描き出しています。主人公ニコライは、任務と正義の間で揺れ動き、最終的には自身の信念を貫き通すという、複雑なキャラクターです。

製作と公開：困難と批判に満ちた道のり

『レッド・スコルピオン』の製作は、当初から困難に直面しました。撮影地は当初スワジランドが予定されていましたが、拒否されたためナミビアに変更。ワーナー・ブラザースとの配給契約も解消されました。

南アフリカ政府からの資金提供を受け、南アフリカ国防軍が協力したことから、アパルトヘイト反対運動家からの批判を浴びました。南アフリカ政府と敵対するアフリカ民族会議への批判のプロパガンダ映画であるとの見方もあります。

製作の遅延やトラブルにより、予算は当初予定の2倍以上に膨れ上がりました。

批評家の評価：賛否両論

映画評論家の反応は分かれました。ロサンゼルス・タイムズのケヴィン・トーマスは「間抜けなライブ・アクション・コミック」と酷評した一方で、ニューヨーク・タイムズのスティーヴン・ホールデンは、ドルフ・ラングレンの体格と存在感を高く評価しました。

『レッド・スコルピオン』は、アクション映画としての娯楽性と、政治的背景や倫理的な問題提起を併せ持った、複雑な作品と言えます。その製作過程も波乱に満ちたものであり、映画そのもの以上に興味深い側面を持っています。

1994年には続編『レッド・スコルピオン2』が製作されましたが、前作ほどの成功は収めませんでした。 しかし、前作と同様に、冷戦終結後の世界情勢と、アフリカの複雑な状況を背景にしたアクション映画として、その存在感は無視できません。

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