レッド・ツェッペリン II

『レッド・ツェッペリン II』は、イギリスのロックバンド、レッド・ツェッペリンが1969年に発表した2作目のスタジオ・アルバムです。プロデューサーはジミー・ペイジ、レコーディング・エンジニアはエディ・クレイマーが務めました。

制作の経緯

前作『レッド・ツェッペリン I』の成功を受けて、アトランティック・レコードから早期の新作を求められたバンドは、多忙なツアー・スケジュールの合間を縫って本作を制作しました。そのため、レコーディングはイギリスとアメリカ各地の複数のスタジオで断続的に行われました。ベーシック・トラックは主に前作で使用したロンドンのオリンピック・スタジオで録音されましたが、ロサンゼルスやニューヨークのスタジオも使用され、最終的には6つのスタジオでレコーディングが行われることになりました。

オーバーダビングやミックスダウンも、その時々で利用可能なスタジオで行わざるを得ない状況で、時にはモニター・スピーカーが十分にない環境でヘッドフォンでバランスを確認しながら作業することもあったそうです。ミキシングの多くはニューヨークのA&Rスタジオで行われました。

ジミー・ペイジは当時の状況を「全くの狂気沙汰だった」と振り返り、制作中に何度もアルバムの出来を不安に感じたといいます。しかし、結果的には統一感のある作品として完成しました。また、レコーディング・エンジニアのエディ・クレイマーの仕事ぶりを高く評価し、「エディには本当に助けられた。彼は素晴らしい男だ」と語っています。

アートワーク

アルバム・ジャケットは、前作のシングル・ジャケットから一転して見開き仕様となりました。デザインはデヴィッド・ジュニパーが手がけ、全体の色合いから「ブラウン・ボマー」という愛称で呼ばれました。ジャケットには、第一次世界大戦中のドイツ帝国陸軍航空隊、フォン・リヒトホーフェン率いる第11戦闘機中隊の隊員の写真に、レッド・ツェッペリンのメンバーの顔が合成されています。メンバーの他に、マネージャーのピーター・グラントやロードマネージャーのリチャード・コール、女優のグリニス・ジョンズの顔も含まれています。背景には雲間から飛行船の白いシルエットが裏側まで伸びる構図が描かれています。内側には神殿のような場所に飛行船が浮かび、スポットライトが当たっている様子が描かれています。

チャート・アクション

『レッド・ツェッペリン II』は1969年 10月22日にアメリカで先行発売されました。ビルボードのチャートでは初登場199位でしたが、翌週には15位に急上昇し、年末にはビートルズの『アビイ・ロード』を抑えて初の首位を獲得、7週間その座を維持しました。イギリスでは10月30日に発売され、138週にわたってチャートインし、1970年2月には首位を獲得しました。アメリカのみで1200万枚以上を売り上げました。2014年のリマスター版は全米9位、全英12位を記録しました。アルバムからシングルカットされた「胸いっぱいの愛を」は全米4位の大ヒットとなりました。

ペイジは本作の大ヒットを予想していなかったようで、「1stアルバムよりも速いペースで売れていると聞いた時は結構ショックだったし、その後雪だるま式に売れていく様には恐怖さえ感じた」と語っています。

評価と影響

過酷な制作状況がメンバーに高揚感を与え、アルバム収録曲はどれも鋭角的で攻撃的な仕上がりとなりました。このアルバムによって、「レッド・ツェッペリン」＝「大音響のヘヴィ・ロック」というイメージが定着し、本作は後続のヘヴィメタル・バンドの青写真とまで評されました。特に「胸いっぱいの愛を」の影響は大きく、この曲で使用された「一度と五度のみの連打リフ」は、多くのハードロック、ヘヴィメタルのバンドに模倣され、ロックの基本的なバッキングフレーズとなりました。この曲は、ローリング・ストーン誌が選んだ「オールタイム・グレイテスト・ソング500」と「オールタイム・グレイテスト・ギター・ソングス100」で、それぞれ75位と11位にランクインしています。また、アルバムもローリング・ストーン誌の「オールタイム・ベストアルバム500」で79位にランクインしました。レディー・ガガは2014年の来日時に「もし無人島にアルバムを持っていくなら？」という質問に対し、ビートルズの『アビイ・ロード』と本作を即座に挙げました。

しかし、本作も前作同様、既存曲からの盗用、流用が多く見られ、著作権侵害で訴えられたため、全9曲のうち3曲が後に作者クレジットを改められることになりました。

リイシュー

1986年に初CD化され、1993年の『コンプリート・スタジオ・レコーディングス』で全曲リマスター化されました。1994年に単独でリリースされ、2014年には最新リマスター版が『I』、『III』と同時にリリースされました。デラックス・エディションおよびスーパー・デラックス・エディション付属のコンパニオンディスクには、各曲のラフ・ミックス・バージョンやバッキング・トラック、未発表曲「ラ・ラ」が収録されています。

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