エディ・クレイマー

エディ・クレイマー：音楽史を彩る名プロデューサー、レコーディング・エンジニア

エディ・クレイマー（Edwin H. "Eddie" Kramer, 1942年4月19日 - ）は、南アフリカ連邦ケープタウン出身の音楽プロデューサー、そしてレコーディング・エンジニアとして、音楽史に多大な貢献をしてきました。

若き日の音楽への目覚め

幼少の頃よりピアノ、チェロ、バイオリンといった楽器に親しみ、名門南アフリカ音楽大学でクラシック・ピアノを学びました。しかし、その音楽的関心は徐々にジャズへと傾倒していきます。19歳でイングランドへ移住すると、ハイ・ファイ機器を導入したホームスタジオを自ら作り上げ、趣味として地元のジャズ・バンドの録音を手がけるなど、早くからその才能を発揮していました。

1960年代：プロとしてのキャリアのスタート

1964年、クレイマーはパイ・スタジオのスタッフとなり、サミー・デイヴィスJr.、ペトゥラ・クラーク、キンクスといった著名なアーティストのレコーディングに関わります。1965年にはKPSスタジオを設立。また、新しい4トラック・スタジオ建設のためにリージェント・スタジオに雇われました。その後、ロンドンのオリンピック・スタジオに参加し、トラフィック、スモール・フェイセズ、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、そしてザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスらの録音に携わります。特に、ジミ・ヘンドリックスとの仕事は、『アー・ユー・エクスペリエンスト?』から『クライ・オヴ・ラヴ』までの全てのアルバム制作に関わるなど、特筆すべき功績として知られています。

1968年にはニューヨークのレコード・プラント・スタジオに移籍し、ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの『エレクトリック・レディランド』のエンジニアリングを担当。その他、ヴァニラ・ファッジ、ジョー・コッカー、NRBQなどのアルバム制作も担当しました。1968年からはフリーランスとなり、『レッド・ツェッペリン II』のエンジニアリングを手がけ、その才能をいかんなく発揮します。

1969年8月には、伝説的なウッドストック・フェスティバルに録音エンジニアとして参加。3日間の開催期間中、会場での録音を担当し、映画『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』（1970年）や、アルバム『Woodstock: Music from the Original Soundtrack and More』（1970年）、『Woodstock Two』（1971年）の制作に貢献しました。

1970年代：伝説のスタジオでの活躍

1970年から1974年にかけて、クレイマーはエレクトリック・レディ・スタジオのプロデューサー兼エンジニアを務め、ジミ・ヘンドリックスの作品に加え、カーリー・サイモン、シャ・ナ・ナ、ピーター・フランプトンなどの作品を手がけました。ヘンドリックスの死後も、ダガー・レコードから発売された『レインボウ・ブリッジ』（1971年）、『戦場の勇士たち』（1972年）、『ヘンドリックス・イン・ザ・ウエスト』（1972年）といった作品のプロデュースを担当し、その遺産を世に伝えました。

1975年には、キッスの初のライブ・アルバム『地獄の狂獣 キッス・ライヴ』のプロデュースを担当。これをきっかけにキッスの全盛期が始まり、その後長きにわたる共同活動の関係を築きました。また、レッド・ツェッペリンの『永遠の詩』、ピーター・フランプトンの『フランプトン・カムズ・アライヴ!』などのエンジニアリングも担当しています。

1980年代～現在：HR/HMからトリビュートまで

1980年代には、ファストウェイ、アンスラックス、トゥイステッド・シスター、LOUDNESSといったHR/HM（ハードロック/ヘヴィメタル）系のアーティストを数多く手がけました。1993年には、ザ・キュアー、エリック・クラプトン、バディ・ガイ、ジェフ・ベック、プリテンダーズ、スラッシュ、ポール・ロジャース、パット・メセニーら、豪華な顔ぶれが参加したジミ・ヘンドリックスのトリビュート・アルバム『ストーン・フリー』に収録された楽曲のプロデュースも担当しています。

エディ・クレイマーは、その卓越した技術と音楽への深い理解によって、数々の伝説的なアルバムの制作に貢献し、音楽史にその名を刻んでいます。

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