レッド計画

レッド計画（War Plan Red）

レッド計画は、20世紀初頭にアメリカ合衆国が策定したイギリスとの戦争を想定した作戦計画です。国と国の対立が色分けされ、アメリカを青、イギリスを赤と示し、万が一の紛争に備えて検討が進められました。1974年にこの計画が機密解除された際、特にカナダが主戦場とされていたことから、米加関係には根本的な影響がもたらされました。

背景

この戦略は、アメリカと利害が対立する可能性がある国家に対する多様なカラーコード戦争計画の一環としてのものでした。他にも、日本（オレンジ）、ドイツ（黒）、フランス（金）など、様々な国に対しての仮想敵国計画が存在していました。このような計画の大半は、具体的な軍事行動には至らず、シミュレーションの域を脱していませんでした。アメリカ陸軍は、1920年代の中頃からレッド計画の原案を作成し、1930年には完成に至りましたが、1939年に新たに策定された「レインボー・プラン」によって大半のカラーコード計画は撤回されることとなりました。

アメリカとイギリスの関係は第一次大戦後には深化し、特にレッド計画の重要性は薄れていくことになります。しかし、1930年代には計画が頻繁に改定され、第二次大戦においてもイギリスが降伏した場合を想定した作戦が継続して検討されました。

イギリス・カナダとの戦争の可能性

レッド計画では、米英間の対立は主に国際貿易や商業を巡る覇権争いに起因すると考えられました。具体的には、アメリカ経済の破壊を目的とするイギリスの侵略を想定し、北米大陸が戦場になることが予定されていました。このため、カナダ国境の防衛や逆侵攻が計画されており、カナダは「クリムゾン」、その他の地域も独自の色で呼ばれていました。

1935年には、アメリカ軍がカナダとの国境に近くに滑走路を設置し、部隊を昆型させるなどの動きが見られました。しかし、1974年の機密解除以降、この計画が公開されるとカナダでは反発が広がり、米加関係には緊張が生まれました。当時は米英関係が改善しつつあったため、計画の実施に対しては疑問の声も多くありました。

計画の詳細

レッド計画は、イギリス海軍に対しアメリカ海軍が攻撃・防御する方法を論じるものでしたが、具体性に欠けていました。主にカナダに焦点を当て、その地理や軍事的資源、経済などを詳細に記述し、イギリス軍によってカナダが拠点とされることを防ぐための作戦を模索していました。

主要作戦地域

1. ノバスコシア州とニューブランズウィック州
アメリカ軍は、ハリファックスに対して先制攻撃を考え、そこからの海軍基地利用を阻止しようとしました。
2. ケベック州とセントローレンス川流域
モントリオールとケベック・シティを占領し、大西洋との連繋を断つことを計画しました。
3. オンタリオ州と五大湖地域
ここを占領することで、カナダの産業を抑える狙いがありました。
4. ウィニペグ
鉄道網の結節点であるウィニペグも重要視されました。
5. バンクーバーおよびビクトリア
これらを占領すれば、カナダを太平洋岸からも孤立させられると見なされていました。

このような計画が存在する一方で、カナダ側もアメリカへの侵攻計画を立てていました。カナダ軍のジェームズ・S・ブラウン大佐が立案した防衛計画一号は、アメリカの都市を攻撃することを目指すものでしたが、現実的ではないとされ、最終的には撤回されました。

まとめ

レッド計画は、アメリカとイギリスの関係が改善される中でも、依然として存在していた過去の政策・戦略を示すものです。その内容から、当時の国際情勢や軍事戦略の考え方を読み取ることができ、歴史における重要な一面を理解する手段となります。

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