レバノンの地理

レバノンの地理

レバノンは中東に位置する国でありながら、砂漠が存在せず、豊富な水資源を持つという特徴があります。その地形は、主に海岸地帯、レバノン山脈、ベッカー高原、アンティ・レバノン山脈の4つの地域に分けられます。

地形

海岸地帯: 地中海の東岸に沿って細長く伸びるこの地域は、夏は高温で乾燥し、冬は温暖で雨が多いという気候です。年間降水量は700〜850mm程度で、その大部分が11月から3月にかけて集中します。肥沃な土壌と灌漑設備のおかげで、農業が盛んです。特に北部と南部には広大な平野が広がっています。
レバノン山脈: 北部のアッカール平野から南部のリタニ川まで、海岸線と並行してそびえ立つ山脈です。平均標高は約2000mで、最高峰はクルナ・アッサウダー山の3088m。急峻な山岳地帯であり、冬には雪が積もり、スキー場が開かれます。夏でも涼しく、国内外からの避暑客で賑わいます。レバノン山脈にはかつてレバノン杉が鬱蒼と茂っていましたが、現在は保護区でのみ見ることができます。レバノン杉は国の象徴であり、国旗にもデザインされています。
ベッカー高原: レバノン山脈とアンティ・レバノン山脈の間にある高原地帯で、野菜や果樹の栽培が盛んです。高原からはリタニ川が南西に流れ、途中で西に転じて地中海に注ぎます。
アンティ・レバノン山脈: レバノン東部に位置する山脈で、レバノン山脈と並行して走っています。

地理的特徴

レバノンは、東のアジアと西のヨーロッパ、そして南のアラビアとエジプトを結ぶ「十字路」としての役割を果たしてきました。その風光明媚な景観は古くから人々の居住地として選ばれてきました。

気候

海岸地帯は地中海性気候で、温暖な気候が特徴です。一方、山岳地帯は標高が高いため、冬には雪が積もります。

観光

レバノンの首都ベイルートは、「中東のパリ」と称される美しい街です。フランスの委任統治領であったことから、フランス文化の影響が色濃く残っています。ベイルート周辺には世界第2位の長さを誇る鍾乳洞、ジェイタ洞窟があり、観光客に人気です。また、ベッカー高原の中心都市バールベックには、ローマ遺跡が数多く保存されており、世界遺産にも登録されています。これらの遺跡はレバノンを代表する観光名所の一つです。

レバノンの山々

レバノンには、レバノン山脈とアンチレバノン山脈の2つの主要な山脈が南北に走っており、標高は2,500mから3,000m級に達します。これらの山脈は冬には雪をかぶり、その美しい光景はレバノンの象徴となっています。特に北部にあるカーネット・アッサウダー山は、標高3,088mで、この国の最高峰です。レバノンという名前は、アラビア語で「白くなる」という意味を持ち、この山々の雪景色に由来すると言われています。

かつてレバノン山脈にはレバノン杉が鬱蒼と生い茂っていましたが、古代フェニキア人が船を建造するために乱伐したため、現在はごく一部の保護区に残るのみとなっています。レバノン杉は国の象徴であり、国旗にも描かれています。政府は現在、積極的に植林活動を進めています。

その他の情報

参考資料: 小山茂樹『レバノン　－アラブ世界を映す鏡－』中央公論社〈中公新書474〉1977年
関連項目: レバノン

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