バールベック

バールベックの遺跡について

バールベック（アラビア語: بعلبك‎; Ba‘labakk）は、 レバノンの東部、ベイルートから北東に約85kmの地点にある、ベッカー高原の中心部に立地する古代遺跡です。この遺跡はユネスコの文化遺産として世界遺産に登録されており、その価値は国際的に認められています。

遺跡の名称「バールベック」は、「ベッカー高原の主神」を意味し、ここにフェニキアの神であるハダド（バアル）が祀られていたことに由来すると言われています。元々、バールベックはフェニキア系の神々の神聖な場所であったとされますが、時代が進むにつれ、ギリシャやローマの神々と習合していきました。その結果、主要な祭神にはジュピター、ビーナス、バッカスが加わり、バールベックはこれらの神々を祀る場所となりました。

歴史

1世紀頃、ローマ帝国がこの地域に進出し、初めての神殿の建設が始まったと考えられています。その後、2世紀から3世紀にかけて、ジュピター神殿とバッカス神殿が次々と建立され、同時に中庭や柱廊などの構築も進みました。

しかし、コンスタンティヌス帝によってキリスト教が国教とされると、古代の神殿は破壊され、バールベックの神殿もキリスト教の教会へとその役割を変えていきました。さらに、7世紀にはアラブ人がこの地を支配し、その後は防衛のための要塞化が進んでいきました。現在のバールベックは、観光と高原農業が営まれる小規模な町に成長しました。

主な史跡

ジュピター神殿

遺跡の大部分は損傷が激しいものの、6本の巨大な列柱が残っており、これはバールベック遺跡の象徴として知られています。神殿の土台には「バールベックの巨石」として知られる3つの大石が使用されています。

バッカス神殿

南側の低地に位置するバッカス神殿は、内部にある祭殿や柱、天井には多くの彫刻が施されています。これにより、古代ローマの建築技術や装飾美術を感じることができます。

世界遺産登録の基準

バールベックの遺跡は、ユネスコによる世界遺産登録基準のうち、特に次の二つの基準を満たしています。
(1) 人類の創造的才能を表現する傑作として評価されています。
(4) 人類の歴史において重要な時代を示す建築様式や構造の優れた例として認識されています。

これらの基準を満たすバールベック遺跡は、他の世界遺産同様に、その価値が語り継がれています。

バールベックは、古代の神々が息づく神聖な地として今なお、多くの人々を魅了し、歴史的な意義を持つ場所として評価されています。観光の要所としてもにぎわいをみせており、その美しい景観とともに訪れる価値があります。

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