レブンアツモリソウ

レブンアツモリソウ（礼文敦盛草）とは

レブンアツモリソウ（学名：Cypripedium marcanthum var. rebunense）は、北海道の礼文島にのみ生息する、非常に珍しい野生のランです。和名の由来は、礼文島に特有のアツモリソウの変種であることからきています。アツモリソウの名前は、花の形が平敦盛が背負った母衣（ほろ）に似ていることに由来しますが、レブンアツモリソウはアツモリソウとは異なり、黄色い花を咲かせるのが特徴です。

特徴

レブンアツモリソウは、草丈が25～40cm程度で、淡いクリーム色の花を5～6月に咲かせます。花は大きな袋状の唇弁を持ち、長さは3.5～5cmに及びます。側花弁は広卵形で、先端が短く尖っています。アツモリソウの変種ですが、紫色の花を咲かせるアツモリソウとは異なり、黄色い花を咲かせるのが大きな特徴です。

受粉のメカニズム

この花は、蜜を分泌せず、花粉も一般的な昆虫の餌となるような形では作られません。にもかかわらず受粉が成立するのは、ニセハイイロマルハナバチの越冬女王蜂を騙すというユニークな方法によるものです。ハチは蜜や花粉を得られると勘違いして花に潜り込みますが、袋状の唇弁に足を滑らせて落ちてしまいます。限られた経路から脱出する際に、背中に花粉塊が付着し、別の花に騙されて落ちた際に雌しべに花粉が付着することで受粉が完了します。

この受粉方法は、ネムロシオガマの花と花の色が似ているために、ハチが誤認して訪花するのではないかという説もあります。そのため、レブンアツモリソウの保護には、送粉者であるニセハイイロマルハナバチと、誤認対象となるネムロシオガマの保護も重要であるとされています。

生育状況と保護

かつては礼文島内で広く見られたレブンアツモリソウですが、大規模な山火事により生育地が露出し、盗掘によって激減しました。現在では、北鉄府地区の保護区「レブンアツモリソウ群生地」以外では、その数は非常に少なくなっています。礼文町の高山植物培養センターでは、培養研究が行われており、人工的な増殖も試みられています。

1994年には、アツモリソウよりも早く「特定国内希少野生動植物種」に指定され、現在では許可なく採集や販売は禁止されています。しかし、園芸的な人気が高いため、複数の業者が国の許可を得て人工増殖に取り組んでおり、少数の苗が安定的に生産されています。ただし、レブンアツモリソウは、礼文島特有の冷涼な気候以外での栽培は非常に難しく、苗の普及には至っていません。

保護上の位置づけ

レブンアツモリソウは、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類（EN）に指定されており、種の保存法に基づく「特定国内希少野生動植物種」にも指定されています。環境省も保護増殖事業を通じて、この希少な植物の保護に力を入れています。

絶滅危惧IB類 (EN)（環境省レッドリスト）
特定国内希少野生動植物種（種の保存法）- 1994年

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