レモネード (保険会社)

レモネード(Lemonade, Inc.)とは

レモネード（Lemonade, Inc.）は、アメリカ・ニューヨークを拠点とする、ピアツーピア（P2P）方式の損害保険会社です。デラウェア州のLemonade, Inc.を親会社とし、傘下にニューヨークの保険会社Lemonade Insurance Company、保険代理店Lemonade Insurance Agency, LLC、そしてイスラエルの技術開発部門Lemonade, Ltd.を擁しています。これら3社を総称して「レモネード」と呼ぶのが一般的です。

レモネードは、自社を「特定の目的のために構築された、テクノロジーファーストで垂直統合された、旧来のシステムにとらわれない保険会社であり、世界初のピアツーピア保険会社である」と位置づけています。アメリカのインシュアテックスタートアップの多くが仲介業務に特化する中、レモネードは自社で保険商品を開発・販売している点が大きな特徴です。

設立と特徴

レモネードは[2015年]]4月、Powermatの社長だったダニエル・シュライバー氏と、Fiverr.com創業者のシャイ・ウィニガー氏によって設立されました。保険業界の出身ではないこの2人が創業したため、従来の保険会社とは異なるアプローチを取っています。ビジネスモデルの中核には、人工知能]と[[行動経済学を据えているのが特徴です。

2018年1月時点で、レモネードはニューヨーク州、カリフォルニア州、イリノイ州、テキサス州、オハイオ州、ネバダ州、ニュージャージー州、ロードアイランド州の8州で保険サービスを提供していました。

沿革

2015年4月: ダニエル・シュライバー氏とシャイ・ウィニガー氏によってレモネードが設立
2015年12月8日: シードラウンドでSequoia CapitalとAlephから1,300万ドルを調達
2016年8月23日: シリーズAラウンドでXL Innovateから1,300万ドルを調達
2016年9月21日: ニューヨーク州でP2P保険サービスを開始
2016年12月5日: シリーズBラウンドでGeneral Catalyst、Thrive Capital、Tusk Ventures、Sequoia、GV（旧Google Ventures）から3,400万ドルを調達
2017年4月4日: イリノイ州でサービス提供を開始
2017年4月24日: Allianzから資金調達
2017年5月10日: カリフォルニア州でサービス提供を開始
2017年12月19日: シリーズCラウンドでソフトバンクグループ、GV（Google Ventures）、Sequoia Capital、Allianzから1億2,000万ドルを調達

AIの活用

レモネードの最大の特徴は、契約から保険金支払いまでの一連の手続きを、ウェブサイトまたはアプリ上で完結できる点です。加入手続きは、チャットボットからの質問に「はい」または「いいえ」で答えるだけで、保険料が算出されます。また、クレーム処理や保険金の手続きもチャットボットが対応し、従来の保険会社のように担当者が自宅に来て被害状況を確認することはありません。

保険約款の策定業務の多くはAIチャットボットによる自動化が進められており、人間の手を介さずに処理されます。AIはリスク分析、保険プランの内容、価格設定にも活用され、徹底的なコストダウンを実現しています。

さらに、レモネードは代理店を介さず、直販のみで営業を行っています。提供する保険商品は、火災保険や盗難保険など、シンプルでわかりやすいものに限定されています。この仕組みのわかりやすさが、保険加入の経験が少ない若年層に支持され、顧客の約27.6%が初めて保険を購入した人たちです。これらの要因により、保険料は自宅所有者向けで月額25米ドルから、賃貸者向けでは月額5米ドルからと低く抑えられています。レモネードの利用者における平均的なアパート賃貸者の保険料は月額5.7ドルで、米国の主要保険会社4社の平均17.8ドルを大きく下回っています。

行動経済学の活用

レモネードは、行動経済学に基づいた独自の試みも導入しています。デューク大学のダン・アリエリー教授を起用し、「ソーシャルインシュランス」という仕組みを導入しました。この仕組みでは、ユーザーは加入時に自分が支援したいチャリティー団体を選び、少人数のグループを形成します。グループ内で1年間保険請求がなかった場合、翌年の保険料が割引されるだけでなく、グループから選ばれたチャリティー団体に「お返し」として寄付が行われます。このグループ内の道徳面に着目することで、加入時の正直な申告を促し、モラルハザードを防ぐ効果が期待されています。

レモネードは、家財保険料の20%のみを徴収し、残りの掛け金を利益として留保しない構造になっています。従来の保険会社では、保険金の支払いを「損失」と捉え、保険金を請求する顧客と利害が対立しがちでしたが、レモネードではこの構造を根本的に見直しました。保険会社に対する不信感は、顧客の粉飾請求の動機になりやすいですが、「ソーシャルインシュランス」の仕組みでは、支援団体への寄付が減ってしまうため、粉飾請求の動機を抑制します。粉飾防止策を講じるよりも、寄付をした方が結果としてコストが安くなるとされています。

さらに、虚偽判定や保険金詐欺を阻止するために、AIには18種類のアルゴリズムが導入されています。なお、グループでプールした資金よりも保険金の請求が多い場合は、外部の保険会社から支払われます。

その他の情報

関連項目:

行動経済学
火災保険
損害保険
シェアリングエコノミー

外部リンク:

Lemonade Insurance Agency

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