レンジャー (日本の警察)

日本の警察特殊部隊「レンジャー」：創設から現代までの軌跡

日本の警察には、特殊な技術訓練を受けたレンジャー部隊が存在します。本稿では、その歴史と活動について、警視庁機動隊のレンジャー部隊を例に詳しく解説します。

黎明期：山岳救助と社会情勢

1965年、警視庁機動隊は、山岳救助や立てこもり事件への対応能力向上を目指し、陸上自衛隊の協力を得てレンジャー訓練を開始しました。これは、第一・五機動隊員を対象としたものでした。当時、70年安保闘争を背景に機動隊の増強が進められており、この訓練は、そうした社会情勢も反映したものといえます。

1969年には、第七機動隊が新設され、調布市に移転。山岳地帯に近い立地条件を活かし、同隊の第三小隊がレンジャー小隊として発足しました。その後、1971年には警察庁主導で、全国規模のレンジャー訓練が開始され、各管区警察局が陸上自衛隊に委託する形で訓練を実施するようになりました。

訓練内容と期間：自衛隊との違い

自衛隊のレンジャー訓練は、長期間にわたる厳しい訓練が特徴です。しかし、警察のレンジャー訓練は、救急活動に必要な能力習得を目的としており、期間は2週間と短縮されています。訓練内容は、ロープを使ったヘリコプターからの降下、負傷者の搬送など、現場での迅速な対応に重点が置かれています。

現代のレンジャー部隊：機能別部隊としての役割

現在、各警察本部の機動隊には、高層建築物や断崖などでの活動に対応できる常設のレンジャー部隊が設置されています。これらの部隊は、ロープ技術や特殊な機器を使用し、様々な状況に対応できる能力を備えています。

警視庁機動隊レンジャー小隊の活動

警視庁機動隊レンジャー小隊は、年間1回、陸上自衛隊の協力を得て、13日間の集中訓練を実施していました。訓練内容は、ザイル技術、山岳救助、ヘリコプター降下など多岐に渡り、青梅警察署、五日市警察署、福生警察署など近隣の警察署との合同訓練や民間救助隊との連携訓練も行っていました。

これらの部隊は山岳警備だけでなく、あさま山荘事件や成田空港管制塔占拠事件などの警備、日本航空123便墜落事故の捜索救難活動などにも参加し、その能力の高さを示しました。

再編と特殊部隊SATとの関係

2001年には、日韓ワールドカップ警備を控え、警視庁機動隊のレンジャー部隊は銃器レンジャーと山岳レンジャーに再編されました。現在、各隊には銃器対策部隊が設置されていますが、ヘリコプター降下やロープを用いた突入は銃器レンジャーの専任となっています。また、特殊急襲部隊（SAT）の隊員選抜においても、レンジャー資格を持つ機動隊員が中心であったと言われています。

まとめ

日本の警察レンジャー部隊は、長年にわたる訓練と経験を通して、高度な専門性を身につけてきました。山岳救助からテロ対策まで、幅広い任務に対応できる能力は、日本の治安維持に重要な役割を果たしています。今後も、社会情勢の変化に対応し、その役割はますます重要になっていくでしょう。

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