銃器対策部隊

銃器対策部隊とは

銃器対策部隊は、日本の警察の機動隊などに設置されている専門部隊です。警察内部では「銃対」と略称されています。主な任務は、銃器を使用した犯罪への対処や、重要施設に対する警戒警備です。特殊部隊（SAT）が出動するような重大事案では、SAT到着までの初動対応を行い、到着後はその支援にあたります。近年では、刑事部の特殊事件捜査係と連携して事件現場に出動する例も増えています。

歴史

特殊銃の配備と狙撃班の編成

1968年の金嬉老事件をきっかけに、1969年から特殊銃（狙撃銃）の配備が始まりました。1973年までには全国の都道府県警察への配備が完了し、特殊銃を運用するための狙撃班も編成されました。1970年の瀬戸内シージャック事件や1972年のあさま山荘事件では、これらの部隊が出動しました。当初は非常設の部隊で、機動隊員が訓練を受け、事件発生時に召集されるという形でした。しかし、三菱銀行人質事件など銃器を使った凶悪犯罪が多発したため、特殊銃隊は狙撃だけでなく、立てこもり犯逮捕のための突入訓練なども行うようになりました。

銃器対策部隊への改編・増強

1996年4月1日、警察庁は特殊銃隊を機動隊の常設部隊として再編成し、部隊名称を銃器対策部隊に改めました。これにより、銃器犯罪だけでなく、テロ対策も任務に加わり、拳銃、狙撃銃、防弾装備、特型警備車などの資機材が整備されました。2001年のアメリカ同時多発テロ事件後には、重要防護施設の警戒が強化され、2002 FIFAワールドカップを控えて機関拳銃も配備されました。2015年には警視庁が緊急時初動対応部隊（ERT）を設置し、2016年には大阪府警察も同様の任務を担うART（Armed Response Team）を設置しました。

編制

銃器対策部隊は、機動隊などの専門部隊として位置づけられています。警視庁機動隊では各機動隊に、大阪府警察機動隊では各機動隊に1個小隊が配置されていましたが、大阪府警ではARTの編成に伴い、計4個小隊に増強されたとみられます。これらの部隊の中には、レンジャーに準じたラペリングに対応できる部隊も存在します。警察庁は、銃器対策部隊、特殊部隊（SAT）、NBCテロ対応専門部隊、爆発物対応専門部隊などをテロ対処部隊と位置づけており、銃器対策部隊は、銃器を使用した事案への対処を主な任務とし、原子力関連施設の警戒警備にもあたります。また、重大事案発生時には、SATが到着するまでの第一次対応を行い、SAT到着後はその支援を行います。原発特別警備部隊などにも、銃器対策部隊に準じた要員が配置されています。

装備

銃器

銃器対策部隊の前身である特殊銃隊は、特殊銃を運用するために設置されました。警察官が所持する銃のうち、拳銃以外のものが「特殊銃」と定義されており、当初は狙撃銃が配備されました。2002年からはH&K MP5機関拳銃の配備も開始され、2015年には自動小銃の配備も決定されました。拳銃としては、当初はニューナンブM60が主流でしたが、その後、SIG SAUER P230、S&W M3913、ベレッタ92 Vertec、P2000などが配備され、2020年東京オリンピック関連警備ではH&K SFP9の配備も確認されています。

その他の装備

防弾衣などの個人装備は、発足当初は試行錯誤がありましたが、現在は防弾帽と特殊防弾衣が全国的に統一されています。突入型防弾衣を着用している部隊や、独自のタクティカルベスト、ゴーグル、サングラスなどを装備した部隊も見られます。車両としては、装甲車である特型警備車や特型遊撃車が配備されています。また、トヨタ・ランドクルーザーなどをベースにした小型遊撃車も導入されています。降車後の防弾装備として、銃眼付きの金属製防弾盾や、突入時に携行する透明な小型防弾盾が使用されています。

活動史

陸上自衛隊との合同訓練

1996年の江陵浸透事件や1999年の能登半島沖不審船事件などを通じて、ゲリラコマンド事案の脅威が認識されるようになりました。これを受けて、2000年2月に国家公安委員会と防衛庁（当時）の間で「治安出動の際における治安の維持に関する協定」が締結され、2001年には警察庁と防衛庁の間で細部協定が締結されました。2002年までに各都道府県警察と陸上自衛隊の各師旅団との間で現地協定が締結され、2004年には「治安出動の際における武装工作員等共同対処指針」が策定されました。2005年からは共同訓練が開始され、各都道府県警の銃器対策部隊も頻繁に参加しています。

他機関との合同訓練

2005年前後から、警察、海上保安庁、税関、入国管理局などが合同で港湾や空港を対象としたテロ対策訓練を実施しており、一部地域では銃器対策部隊も参加しています。この訓練は「水際危機管理対策訓練」と呼ばれ、テロリストの入国を阻止することが目的です。

登場作品

銃器対策部隊が登場する作品には、小説、漫画などがあります。

『Op.ローズダスト』
『S -最後の警官-』
『交戦規則 ROE』（黒崎視音）
『IOTA 戦術機巧歩兵彼女は危険な戦闘兵器』
『ゴルゴタ』（深見真）
『ライフルバード機動隊狙撃手』（深見真）
『東京×異世界戦争自衛隊、異界生物を迎撃せよ』（鷲宮だいじん）
『バニラ A sweet partner』
『怪獣自衛隊』（井上淳哉）
『レッドリスト絶滅進化論』（安生正、村瀬克俊）
『隠蔽捜査〜去就〜』（今野敏）

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