ロイド・キャリア

ロイド・キャリア：第二次世界大戦を支えた小型輸送車

ロイド・キャリアは、第二次世界大戦においてイギリス軍およびイギリス連邦軍が使用した、小型の装軌式輸送車両です。そのルーツはカーデン・ロイド豆戦車にまで遡り、兵員や装備、特に歩兵支援用の兵器を戦場に輸送する役割を担いました。小型で汎用性の高いユニバーサル・キャリアと共に、戦場での重要な足として活躍しました。

設計と開発

ロイドキャリアは、軽量な装甲鋼板車体に、フォードソントラックのエンジン、変速機、動力伝達装置といった信頼性の高い機械部品を採用することで、高いコストパフォーマンスを実現しました。特徴的なのは、ラジエーターがエンジン後方に配置されている点です。アクセルは車体前部にあり、トランスミッションの作動によって車両は前進します。起動輪と誘導輪にはそれぞれブレーキが装備され、運転手はレバー操作で車両を制御しました。旋回は、片側のブレーキをかけることで車体を横滑りさせる信地旋回方式でした。

車体上部は正面と側面が装甲で覆われていましたが、後部と上部は開放されていました。これは、ロイドキャリアが戦闘車両として設計されたわけではないため、問題とはされませんでした。悪天候からの保護には、キャンバス製の覆いが使用されました。

1939年、イギリス陸軍はロイドキャリアの試験を行い、兵員輸送車として200両を発注しました。初期生産はヴィヴィアン・ロイドの会社が行いましたが、後にフォード・モーター、ウーズレイ・モーター、デニスブラザーズ、エーブリング・アンド・バーフォード、センチネルワゴンワークスといった大規模メーカーに生産が委託され、最終的には約26,000両が生産されました。

運用

ノルマンディー上陸作戦以降、終戦までロイドキャリアは幅広く運用されました。その主な役割は、QF 6ポンド砲などの火砲の牽引でした。また、REME（王立電気・機械エンジニア）のD8ブルドーザーと連携し、戦車の回収作業にも従事しました。この際には、ロイドキャリアは牽引車のための予備部品や資材の運搬に使用されました。

派生型

ロイドキャリアは基本設計は共通ですが、その用途に応じていくつかの派生型が存在しました。主なものとしては、歩兵輸送車、牽引用輸送車、電線敷設用輸送車、始動・充電用牽引輸送車などがあります。牽引用輸送車は、4.2インチ迫撃砲やQF 2ポンド砲、QF 6ポンド砲などを牽引し、砲兵の輸送も担っていました。始動・充電用牽引輸送車は、発電機を搭載し、装甲部隊の戦車の整備支援に活躍しました。

まとめ

ロイドキャリアは、第二次世界大戦においてイギリス軍の戦力維持に大きく貢献した小型輸送車です。そのシンプルながらも堅牢な設計、そして汎用性の高さは、戦場において高い評価を得ました。生産数の多さからも、その重要性が伺えます。小型ながら様々な役割をこなしたロイドキャリアは、大戦中のイギリス軍を支えた影の立役者と言えるでしょう。

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