ロイヤル・エア・モロッコ630便墜落事故

ロイヤル・エア・モロッコ630便墜落事故

1994年8月21日、モロッコで発生したロイヤル・エア・モロッコ630便の墜落事故は、航空史において非常に悲劇的な出来事として記録されています。この事故は、アガディール・アル・マシーラ空港からムハンマド5世国際空港に向かう途中、アトラス山脈に墜落しました。搭乗していた44人の乗員および乗客は全員が命を落としました。現場の調査や解析により、意図的な墜落が示唆されています。

事故機の詳細

事故機はATR 42-312（機体番号CN-CDT）で、1989年に製造されました。初飛行は同年の1月20日で、ロイヤル・エア・モロッコには3月24日に納入されました。この機体は、プラット・アンド・ホイットニー・カナダ製のPW120エンジンを2基搭載していました。事故当時、機体は比較的若い機材であり、運航において特別な問題は報告されていませんでした。

乗員と乗客

この便を操縦していた機長は32歳の男性で、約4,500時間の総飛行時間を持っていました。副操縦士は女性で、一緒に乗務していました。乗客は計40人であり、特にクウェートの王子とその妻を含む数名が特定されています。また、モロッコ人以外でも8人のイタリア人、5人のフランス人、4人のオランダ人、2人のクウェート人、そして1人のアメリカ人が搭乗していました。

事故の経過

現地時間の19時、630便はアガディール・アル・マシーラ空港を離陸し、自動操縦での上昇を開始しました。離陸から約10分後、高度11,480フィート（およそ3,500メートル）で、機長が自動操縦を解除し、急激に機体を降下させました。副操縦士は電波で遭難信号を送信し、機長に対して制止を試みましたが、630便はアトラス山脈のDouar Izounine付近に墜落しました。

墜落の衝撃は非常に激しく、遺体の身元確認がほぼ不可能な状態でした。この悲惨な事故は、乗員や乗客の家族に大きな影響を及ぼし、航空機業界にも衝撃を与えました。

調査の結果

事故後、モロッコの運輸省が設立した調査委員会が詳細な調査に着手しました。墜落現場から回収されたコックピットボイスレコーダー（CVR）とフライトデータレコーダーは、フランスで解析が行われました。この解析から、CVRには副操縦士が「助けて、助けて、機長が…」と叫ぶ声が録音されており、その音声は悲劇的な印象を与えました。

報道によれば、機長が失恋を理由に自殺を図ったとの情報もありましたが、調査委員会はその情報を確認することができなかったと発表しました。最終的には「機長が自動操縦を解除し、機体を急降下させた」と結論づけられましたが、モロッコのパイロット組合はこの結論に反対の意を示しました。

この事故は、航空安全に関する問題を再認識させる契機となり、その後の航空業界ではより厳格な安全基準が求められるようになりました。類似の事故として、エジプト航空990便やジャーマンウイングス9525便の墜落が挙げられます。それぞれ、さまざまな要因が絡んだ事故であり、航空事故調査の重要性を再確認させる事例です。

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