ATR 42

ATR 42：短距離路線を支えるターボプロップ機

ATR 42は、フランスとイタリアの航空機メーカーであるATR社が製造するターボプロップ双発旅客機です。その名前の「42」は、標準的な座席数が42席であることを示しています。この航空機は、短距離路線や滑走路の短い地方空港での運用に特化して設計されており、世界各国の航空会社で広く利用されています。

設計と特徴

ATR 42は、円形の胴体断面を持ち、客室内の最大幅は2.57m、全長は13.85m、最大高は1.91mです。高翼配置の主翼は、客室からの良好な視界を提供し、洋上監視機としての利用も可能にしています。降着装置はダブルタイヤを装備し、油圧で格納されます。主脚は胴体下部の膨らみに格納され、車輪扉がないため、格納時にもタイヤ側面が露出します。この構造により、主脚幅が狭く、横風に弱いという特性があります。

貨物室は機体前方にあり、大型のカーゴドアを備えているため、貨客混載機としての運用が一般的です。乗客用のドアは機体後方左側に、サービスドアは機体後方右側に設けられています。旅客型には、座席を撤去して貨物を積載できる応急貨物型と、より多くの貨物を積載できる貨物専用型があります。

また、ATR 42とATR 72は、「ホテルモード」と呼ばれる機能を有しており、右側のエンジンを運転させたままプロペラをロックすることで、空港での待機中に騒音を抑えつつ、客室の空調や照明を確保できます。機体の基本設計は試作段階からほぼ変更されておらず、エンジンやアビオニクスのアップグレードにより改良が重ねられています。

開発の経緯

1980年代初め、フランスのアエロスパシアルとイタリアのアエリタリアは、それぞれ40席クラスの輸送機計画を持っていました。両社は共同で開発を行うことを決定し、1980年7月に協定が成立しました。2019年には、納入前のATR 42-600型機が試験飛行中にエンジントラブルを起こし、一時的に引き渡しが遅延しました。

各モデル

ATR 42には、様々なモデルが存在します。

ATR 42-200: 試作機として数機が製造されました。
ATR 42-300: 基本生産型で、最大離陸重量が引き上げられました。
ATR 42-320: エンジンを換装し、高温高地性能を強化したモデルです。
貨物改修型: 応急貨物型と貨物専用型があります。
ATR 42-400: エンジンに六翅プロペラを装着したモデルです。
ATR 42-500: エンジンを換装し、搭載量と離着陸性能を向上させたモデルです。アビオニクスも更新されています。
ATR 42-600: 最新モデルで、エンジン、アビオニクス、客室デザインが大幅に改良されました。グラスコックピットやLED照明が採用されています。また、オプションで視界拡張装置「ClearVision」が搭載可能です。2022年には、LPV進入方式が日本で初めて導入されました。
ATR 42-600S: 短距離離着陸性能を向上させたモデルとして開発されましたが、後に開発が中止されました。大型方向舵、出力向上形エンジン、25度まで設定可能なフラップ、減速用スポイラー、オートブレーキなどの機能が計画されていました。
ATR 42 Surveyor: 軍や沿岸警備隊向けの洋上監視機で、レドームやカメラポッドが装備されています。

日本での導入

日本国内では、以下の航空会社がATR 42を導入しています。

日本エアコミューター (JAC): 8機を確定発注し、離島路線を中心に運航しています。
[オリエンタルエアブリッジ]: 2機を導入し、長崎県内離島路線に就航しています。
天草エアライン (AMX): 2代目「みぞか号」として導入し、天草地域を結んでいます。
北海道エアシステム (HAC): 3機を導入し、札幌（丘珠）を拠点に北海道内の路線で運航しています。
トキエア: 新潟[[空港]]を拠点に設立され、ATR 42-600を導入予定です。

小笠原路線

小笠原諸島では、空港設置の計画が進められており、ATR 42-600Sの就航が検討されましたが、現在は開発が中止されています。滑走路の長さや燃料供給の問題が課題となっています。

事故・トラブル

ATR 42は、過去にいくつかの重大な事故が発生しています。

1987年、イタリアで墜落事故が発生し、乗員乗客全員が死亡しました。
1994年、モロッコで墜落事故が発生し、乗員乗客全員が死亡しました。
2008年、ベネズエラで墜落事故が発生し、乗員乗客全員が死亡しました。
2010年、ベネズエラで墜落事故が発生し、多数の死傷者が出ました。
2015年、インドネシアで墜落事故が発生し、乗員乗客全員が死亡しました。
2016年、パキスタンで墜落事故が発生し、乗員乗客全員が死亡しました。
* 2020年、日本エアコミューターの機体が奄美[[空港]]着陸時に滑走路を逸脱する事故が発生しました。乗員乗客は全員無事でしたが、機体に損傷がありました。同年、別の機体でプロペラが滑走路に接触する事故も発生しています。

ATR 42は、地域航空の重要な役割を担うターボプロップ機として、今後もその進化が期待されます。その多様なモデルや運用形態は、地方路線の活性化に貢献していくでしょう。

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