ロイ・ビーン (映画)

『ロイ・ビーン』：無法地帯の判事の生涯

1972年公開のアメリカ西部劇映画『ロイ・ビーン』（原題：The Life and Times of Judge Roy Bean）は、ジョン・ヒューストン監督、ポール・ニューマン主演という豪華な布陣で贈る、実在した人物を題材とした傑作です。19世紀末のテキサス州、法律も秩序もない無法地帯を舞台に、独自のやり方で正義を執行した判事ロイ・ビーンの生涯が、迫力ある映像と脚本で描かれています。

映画は、1890年代のテキサス州ペコス川西岸地域を舞台に物語が始まります。この地域は、無法者たちが跋扈し、暴力と無秩序が支配する無法地帯でした。そんな中、ある流れ者が強盗に襲われますが、メキシコ人少女の助けを借りて難を逃れ、自ら“判事のロイ・ビーン”を名乗り、この地に居を構えます。

ビーンは、酒場を法廷として使用し、そこに自身の好みに改造を加え、ハリウッド女優リリー・ラングトリーのポスターを飾り付けるなど、型破りな裁判所を作り上げます。彼は5人の助手を得て、実業家としても成功を収めますが、同時に、黒人殺しなどの悪党を容赦なく処刑する、冷酷な判事としても知られるようになります。

しかし、映画はビーンの冷酷な一面だけでなく、彼の人間的な側面にも焦点を当てています。メキシコ人少女マリーとの静かな時間、熊を友人として傍に置くなど、彼の内面にある繊細さも描かれています。

物語は、弁護士を名乗る男がビーンの土地所有権に異議を唱えたことから新たな展開を迎えます。ビーンは彼を熊の檻に閉じ込め、その夜、酒場に忍び込んだ殺し屋によって熊が殺害されるという事件が発生。この事件をきっかけに、マリーの妊娠、リリー・ラングトリーの町への来訪など、ビーンの周囲は慌ただしくなっていきます。

リリーに会うため、ビーンは奮闘しますが、チケットは売り切れで、楽屋に入れてやるという男に騙され、無一文になってしまいます。町に戻ったビーンは、マリーの死産に立ち会わなければならず、その悲しみの中で、彼は飲んだくれの医者に対して怒りを爆発させ、自ら医者を絞首台へと送ります。

そこに、以前土地問題で対立した弁護士ガスが現れ、ビーンの留守中に町長に選出されたことを告げ、もう勝手な判決は許さないことを宣言します。ビーンは、何も言わずに馬に乗り、町を去って行きます。

20年後、マリーの娘ローズは、突如現れた老人に会うことになります。その老人は、ローズの父親、ロイ・ビーンでした。しかし、それは父娘の短い再会であり、ビーンは再び姿を消します。

ポール・ニューマンは、この映画について、「撮影は本当に楽しかったし、映画の出来も4分の3は古典と言って良いほどの出来だと思う。しかし、監督も含め皆、この素敵な映画をどう終わらせれば良いのかわからなかった」と語っています。この言葉は、映画の持つ独特な魅力と、その余韻の深さを象徴していると言えるでしょう。無法地帯で生きた男の生涯は、観る者の心に深い感銘を残すことでしょう。

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