ロザラム児童性的搾取事件

ロザラム児童性的搾取事件

ロザラム児童性的搾取事件は、イギリス北部のサウス・ヨークシャー州ロザラムおよびその近郊都市圏で、1997年から2013年にかけて組織的に行われた児童に対する性的虐待の総称です。この事件では、主にパキスタン系の男性集団によって、多数の子どもたちが被害に遭いました。

事件の概要

事件が表面化したのは2010年頃、地元に住むパキスタン系住民5名による少女たちへの性犯罪が明るみに出たことがきっかけでした。これを受け、タイムズ紙が行った調査報道により、ロザラムにおける児童性的虐待が極めて広範に及んでいる実態が明らかになりました。

2014年8月に発表されたアレクシス・ジェイ教授による独立調査報告書によると、1997年から2013年までの間に、少なくとも1400名もの子どもたちが体系的な性的虐待の被害を受けたと推定されています。被害者の多くは白人の少女であり、最年少では12歳の児童も含まれていました。報告された虐待行為には、強姦、集団強姦、誘拐、拉致、拷問、そして人身売買といった深刻なものが含まれています。

当局の対応と問題点

地元当局による児童虐待に関する調査は、遡ること1999年には既に始まっていましたが、その多くが結論に至らず、また公に発表されることもありませんでした。事件の深刻さが明らかになるにつれて、サウス・ヨークシャー州警察やロザラム都市自治区議会といった地元の公的機関の対応は、その遅れや隠蔽体質が厳しく批判されました。

当局の対応が遅れた背景には、いくつかの複雑な要因が指摘されています。

人種差別批判への懸念: 地元警察当局は、加害者が特定の民族グループに偏っていることから、人種差別であると批判されることを恐れ、積極的な捜査や公表をためらったとされています。
州政府の怠慢: 州政府も問題を把握していながら、長年にわたり放置を続けた怠慢があったと批判されています。
* 政治的圧力: 州議会議長を含むパキスタン系地方議員の一部が、事件の公表や対応が人種差別や反移民感情を高め、地域社会の分断を招くとして、問題解決を阻害するような動きを見せたことも指摘されています。

独立調査と報告書

こうした状況を受けて、2013年にはアレクシス・ジェイ教授をリーダーとする独立調査会がロザラム議会によって設立されました。この調査会の目的は、ロザラムにおける児童性的虐待の実態とその背景、そして当局の対応を包括的に検証することでした。

2014年のジェイ報告書は、ロザラム当局が組織的な事件の存在を認識していたにも関わらず、被害者保護のための効果的な対応を怠った事実を手厳しく批判しました。報告書は、前述の通り推定被害者数を明らかにし、加害者の主な属性や虐待の手口についても詳細に記述しています。この報告書は、ロザラムだけでなくイギリス全土における児童保護システムと当局の責務について、大きな問いを投げかけることとなりました。

隠れた被害

この事件で主に注目されたのは白人の少女たちへの被害ですが、パキスタン系コミュニティ内で、加害者と同じアジア系の少女たちが受けた性的虐待は、表面化しにくい性質があり、被害が埋もれているケースも多いと指摘されています。実際には、ジェイ報告書で示された推定被害者数よりも、さらに深刻な実態があるとの見方もあります。

ロザラム児童性的搾取事件は、公的機関の機能不全、人種差別をめぐる複雑な問題、そして児童保護システムの脆弱性を露呈した、イギリス社会に大きな衝撃を与えた事件です。

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