ロザルバ・カッリエーラ

ロザルバ・カッリエーラ：パステル画の女王

ロザルバ・カッリエーラ（Rosalba Carriera, 1675年10月7日 - 1757年4月15日）は、ヴェネツィア共和国出身の肖像画家であり、特にパステル画の分野で傑出した才能を発揮しました。彼女の革新的なスタイルは、当時のヨーロッパの肖像画の世界に大きな影響を与えました。

生涯

カッリエーラはヴェネツィアで生まれました。母親はヴェネツィアンレース職人であり、彼女は幼い頃から工芸に親しみました。当初、家業はレース作りでしたが、後に象牙製の嗅ぎタバコ入れの制作へと移行し、ロザルバは小さな肖像画を描くようになりました。これが彼女の画家としてのキャリアの始まりとなりました。

25歳の時、カッリエーラはローマのアカデミア・ディ・サン・ルカに加入し、画家としての地位を確立しました。1716年には、フランスの美術品収集家ピエール・クロザと出会い、彼の勧めで1720年に家族と共にパリに移住しました。パリでは、彼女のパステル画による肖像画が評判を呼び、フランス王室からルイ15世を含む36点の肖像画の注文を受けました。多忙な彼女は、妹たちの協力を得ながら、これらの注文をこなしました。同年、王立絵画彫刻アカデミーの会員にも選出されています。

パリでの成功後、1721年にヴェネツィアに戻り、その後モデナやウィーンでも活動しました。1730年には、ウィーンで6ヶ月間滞在し、皇帝カール6世の支援を受け、当時王女であったマリア・テレジアに絵画を教えたとされています。

しかし、1750年代には視力を失い、1757年に故郷ヴェネツィアで生涯を閉じました。

作品と影響

カッリエーラの作品は、繊細な色彩と柔らかな表現が特徴であり、特にパステル画においてその才能が際立っています。彼女は、伝統的な肖像画の形式にとらわれず、より自然で生き生きとした人物像を描き出すことに成功しました。彼女の作品は、ロココ美術の優雅さと繊細さを体現しており、後世の画家に大きな影響を与えました。

彼女は、ヨーロッパ各国の王侯貴族の肖像画を数多く手がけ、その顧客には、フランス王室、神聖ローマ皇帝、イギリス貴族などが含まれます。彼女の作品は、現在も世界中の美術館や個人コレクションに所蔵されており、多くの人々を魅了し続けています。

参考文献

Walther A. Rosalba Carriera. Dresden: VEB Verlag der Kunst, 1984.
Sani B. Rosalba Carriera. Torino: U. Allemandi; Milano: Messaggerie libri, 1988
Panzeri L. Rosalba Carriera. Mirano: Eidos, 2002
Jary M. Die Pastellkönigin: historischer Roman. München: Droemer, 2005
* Mehler U. Rosalba Carriera 1673—1757: die Bildnismalerin des 18. Jahrhunderts. Königstein im Taunus: Ortensia Koenigstein, 2006

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