アカデミア・ディ・サン・ルカ

アカデミア・ディ・サン・ルカ、または聖ルカアカデミーは、1593年に画家フェデリコ・ツッカリによって正式に設立された、ローマを拠点とする歴史ある芸術家協会です。このアカデミーは、聖ルカが聖母マリアの肖像画を最初に描いたとされる伝説に由来し、芸術家たちの守護聖人として崇められていることから、その名が付けられました。

イタリアにおける美術家養成の先駆けとなったのは、1563年にジョルジョ・ヴァザーリの提唱でフィレンツェに設立されたアカデミア・デル・ディセーニョですが、これは個々の芸術家の記録を残すにとどまり、組織としての発展は限定的でした。これに対し、アカデミア・ディ・サン・ルカは、教皇グレゴリウス13世が学術を奨励した1577年頃に、フェデリコ・ツッカリとフェデリコ・ボッロメオらによって美術家の集まりとして設立されました。

1593年からは、ツッカリが初代会長として教育機関としての改革を推進し、その理念は「Idea de' pittori scultori ed architetti」（画家、彫刻家、建築家の理念）として発表されました。アカデミアは教育活動と展覧会を通じて、ヨーロッパ各国の美術院のモデルとなり、その後の美術教育に大きな影響を与えました。アカデミー内部では、芸術に関する議論も活発に行われ、特に17世紀後半にはアンドレア・サッキとピエトロ・ダ・コルトーナの間で、「古典主義」と「バロック」の対立を巡る論争が繰り広げられたことは有名です。この論争は、当時の美術界における大きな潮流を反映したものでした。

イタリア統一後の1872年、アカデミアは王立美術院（Accademia Reale）と改名されました。その後、1948年には現在の名称である「Accademia nazionale di San Luca」（国立聖ルカアカデミー）となりました。

現在も、アカデミア・ディ・サン・ルカは、その歴史と伝統を受け継ぎ、美術に関する教育、研究、展覧会など、多岐にわたる活動を行っています。その活動は、イタリアだけでなく、国際的な美術界においても重要な役割を果たしています。アカデミアには、多くの著名な芸術家が会員として名を連ねており、美術史における重要な存在として認識されています。

アカデミア・ディ・サン・ルカは、設立から今日に至るまで、ヨーロッパ美術史における重要な転換点を目撃し、また、その発展に大きく貢献してきました。その影響は計り知れず、美術を学ぶ者にとって、その存在は常に注目されるべき対象です。アカデミアの活動は、過去の偉大な芸術家たちの遺産を未来に繋ぎ、新たな芸術の創造を促進する原動力となっています。


アカデミア・ディ・サン・ルカは、美術史における重要な機関であり、芸術の発展に寄与し続けています。その活動は、教育機関としての役割を超え、美術に関する議論と創造を促進する場として、現代においてもその意義を失っていません。

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