ロザンヌ・バー

ロザンヌ・バー：複雑な宗教的背景からハリウッドスターへ、そして数々の論争へ

ロザンヌ・バー(1952年11月3日生まれ)は、アメリカ合衆国ユタ州ソルトレイクシティ出身の女優、コメディアン、そして声優として知られる人物です。彼女の生涯は、複雑な宗教的背景、芸能界での華々しい成功、そして数々の物議を醸した発言や事件によって彩られています。

複雑な宗教的出自と幼少期

バーは、セールスマンの父と簿記係の母を持つ家庭に生まれました。父方の祖父はオーストリア＝ハンガリー帝国とリトアニア出身で、アメリカに移住する際に苗字を「ボリソフスキー」から「バー」に変更しています。一方、母方の祖母は敬虔な正統派ユダヤ教徒でした。バーの両親は、モルモン教徒が多数を占める地域に住んでいたため、自らの信仰を隠すこともありました。バー自身は、幼少期にユダヤ教とモルモン教の両方の儀式に参加した経験をもち、「曜日によって宗教が変わる」生活を送っていたと語っています。

3歳の時には、ベル麻痺を患い、顔の左半分に麻痺が生じましたが、後に奇跡的に回復しました。6歳でモルモン教の教会で初めて人前で話す経験をし、その後、モルモン教の子どもグループの代表に選ばれるなど、幼少期から人前で話すことに慣れ親しんでいました。16歳の頃には交通事故に遭い、脳に深刻なダメージを受け、8ヶ月間の入院生活を送ることになります。この経験は、彼女の人生に大きな影響を与えたとされています。

芸能界での成功

1980年代初頭からスタンダップ・コメディアンとして活動を始めたバーは、数々の高い評価を得て、1988年から1997年にかけて放送されたテレビシリーズ『ロザンヌ』で主演を務め、一躍スターダムにのし上がります。この作品で、彼女は1993年にエミー賞とゴールデン・グローブ賞を受賞し、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームにも名を刻みました。

『ロザンヌ』以外にも、映画『シー・デビル』、『カウガール・ブルース』などに出演し、多岐にわたる演技力を披露しました。また、1998年にはブロードウェイミュージカル『オズの魔法使い』で西の悪い魔女役を演じるなど、活躍の場を広げていきました。

私生活と論争

バーはこれまで3度の結婚を経験していますが、全て離婚に終わっています。2人目の夫はコメディアンのトム・アーノルドでした。また、彼女は自閉症スペクトラム障害と診断されています。

しかし、バーのキャリアは、数々の論争によって影を落とされることになります。1990年には、野球の試合前の国歌斉唱で、調子が外れた歌い方と、試合後の奇行が物議を醸し、大統領からも批判される事態となりました。

2009年には、ユダヤ系の風刺雑誌『ヒーブ』に、アドルフ・ヒトラーに扮した写真が掲載され、ホロコーストを軽視したと批判されました。バー自身は風刺のつもりであったと主張していますが、この行為は、大きな批判を浴びました。

2014年には、トレイボン・マーティン射殺事件の加害者であるジョージ・ジマーマンの両親の自宅住所と電話番号をツイートしたとして、裁判で損害賠償を命じられました。2018年には、フロリダ州の高校銃乱射事件の生存者であるデビッド・ホッグに対する陰謀論をツイートし、削除する事態となりました。

キャリアの終焉と政治活動

2018年、バラク・オバマ政権の大統領上級顧問であったバレリー・ジャレット氏に対する人種差別的なツイートが、大きな波紋を呼び、『ロザンヌ』は打ち切りとなりました。この事件は、バーのキャリアに終止符を打つものとなりました。彼女はその後も、ソーシャルメディアを通じて物議を醸す発言を繰り返しており、物議を醸す発言は現在も続いている。

バーは2012年のアメリカ合衆国大統領選挙では、アメリカ緑の党からの大統領候補指名を目指して出馬するも、惜しくも敗れています。

まとめ

ロザンヌ・バーの生涯は、複雑な宗教的背景、芸能界での成功、そして数々の論争によって構成されています。彼女の才能と影響力は疑う余地がありませんが、その発言や行動は常に物議を醸し、多くの人々の議論の的となっています。彼女の人生は、成功と失敗、賛辞と批判が複雑に絡み合った、まさに波乱万丈の物語と言えるでしょう。

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