ロシア・スウェーデン戦争 (1741年-1743年)

ロシア・スウェーデン戦争(1741-1743年)：スウェーデンの敗北と大国の思惑

1741年から1743年にかけて、ロシア帝国とスウェーデン王国は戦争状態に突入しました。この戦争は、スウェーデンでは「ハット党戦争」、フィンランドでは「ハット戦争」と呼ばれ、両国の歴史に大きな影を落としました。大北方戦争で敗北を喫したスウェーデンは、その後「自由の時代」を迎えましたが、その平和は脆いものでした。

戦争への道：スウェーデンの思惑とロシアの動向

大北方戦争後のスウェーデンは、宰相アルヴィド・ホルンの指導の下、中立政策を維持し、20年間の平和を享受していました。しかし、かつての栄光を取り戻したいという野望を抱く若い貴族たちは、この平和に満足していませんでした。1738年、ホルンは失脚し、親フランス・対ロシア強硬派のハッタナ党が政権を掌握しました。

1740年、ロシアのアンナ女帝の崩御とオーストリア継承戦争の勃発という国際情勢の変化が、事態を加速させました。オーストリアの勢力を弱めたいフランスは、スウェーデンにロシアへの攻撃を促し、戦争へと突き動かしたのです。

スウェーデンの準備不足と戦略の失敗

しかし、スウェーデンの戦争準備は著しく遅れていました。フィンランドにおける軍の指揮官は、戦争に反対したことで更迭され、後任のレーヴェンハウプト将軍は、防衛体制の脆弱さを目の当たりにしました。資金は侵略戦争の準備に充てられ、防衛強化は後回しになったのです。

スウェーデンの当初計画は、ヴィボルグ占領後、サンクトペテルブルクへ進軍し、フランスとの協力の下でクーデターを起こすという大胆なものでした。12月にはクーデターは発生しましたが、エリザヴェータ・ペトロヴナが女帝として即位し、ロシアはスウェーデンとの和平を拒否しました。

スウェーデン艦隊は、疫病の発生などにより出撃が遅れ、陸軍も準備不足でした。そのため、7月末の宣戦布告は侵攻開始より先に発表されるという失態を演じました。

戦場の展開とスウェーデンの劣勢

スウェーデン軍の遅れを突いたロシア軍は、ピョートル・ラシ元帥率いる軍でヴィルマンストランドを攻撃、スウェーデン軍を大敗させました。スウェーデン軍の指揮系統の混乱、そしてロシア軍の本格的な攻撃を予想していなかったことが敗因でした。

1742年も、スウェーデンの劣勢は続きました。ロシア軍の侵攻を受け、スウェーデン軍はフレデリクスハムンを放棄、ヘルシングフォシュに撤退しました。スウェーデン軍の陸海軍の連携不足が、敗北を招いた要因の一つです。ヘルシングフォシュ陥落後、レーヴェンハウプトとブッデンブロックは逮捕され、軍法会議にかけられました。フィンランドはロシア軍に占領され、「小さな怒り」と呼ばれる時期に入りました。

1743年、スウェーデンはオーランド諸島を奪還しようと試みましたが、ロシア艦隊の抵抗に遭い失敗しました。この頃には、和平に向けた動きが加速していました。

オーボ条約と戦争の終結

最終的に、オーボ条約が締結され、戦争は終結しました。スウェーデンはヴィルマンストランド、フレデリクスハムンなどの領土をロシアに割譲しました。この条約は、スウェーデン・バルト帝国の衰退を象徴する出来事となりました。ロシアは、獲得した領土をヴィボルグ総督領に加え、後にフィンランド大公国に編入しました。一方、フランスは、ロシアを牽制するという目的を部分的に達成したと言えるでしょう。

ロシア・スウェーデン戦争は、スウェーデンの準備不足、戦略の失敗、そしてロシアの巧みな戦略によって決定づけられた戦争でした。この戦争は、スウェーデンのみならず、バルト海地域の勢力図に大きな影響を与えたのです。

もう一度検索